検索窓
今日:32 hit、昨日:3 hit、合計:40,558 hit

調薬2 ページ24

.

「先ほどはありがとうございました」
「なに、問題ない。大変だったようだね」


これだけの美丈夫に見つめられたとき年頃の若い娘ならば卒倒ものだろうがノアはそうではない。興味はもうエルヴィンの手にした籠に移っている。

「貰い物なんだが、味見をしてくれないか」

なんだそんなことか。というか私を呼んだということは味見じゃなくて毒見だろ。

とは間違っても口に出さず、へし口になりながら小奇麗な箱を開けるとブローチェンがいくつか入っていた。つまんで割ってみると中にはジャムが詰まっている。


ベリーだろうか。見た目に異常はないが、と鼻を近づけると甘酸っぱい香りに交じってどこかで嗅いだことのある匂いが鼻を抜けた。


「催淫剤入りですね」
「食わなくてもわかるのか」


向かいで足を組み尋ねてくるリヴァイにこくりとうなずくとふい、と視線を逸らされる。
その様子を見るに知ってて食べさせようとしたのか。

「健康に差し障りありませんのでどうぞお持ち帰りいただき美味しく召し上がってください」
「相手を考えると素直に食べられるものでもないだろ」
「ええ。今晩あたりそのお相手から訪問があるのでは?」

淡々と述べるノアに、想像したものと当てが外れたリヴァイはなんともいえない顔をしている。

毛虫を見るような目をしないだけましだと思ってもらいたいとノアは口を尖らせる。ところでどんな相手からもらったのだろうか。


2人のやり取りをエルヴィンはただにこにこと見守っている。部下に強壮剤入りのブローチェンを食べさせようとした上官も人が悪いが、この男も大概である。

なんだか納得いかないままであるが、これで用済みだと思ったノアは席を立ち団長室を後にしようとした。

「待て」
「何かご用でしょうか」

エルヴィンはリヴァイと目を合わせ、二人はうなずいている。どうやらノアがここへ来る前に本題は話されていたようだ。


「ノア、惚れ薬を作ってくれないか」


きゅるり、とノアの瞳が光った。驚きと好奇に満ちた目である。

食べろと言ったり作れと言ったり。彼らがそれをいついかように使うかはノアの知る限りでないが、しかし作るという事はノアにとって一番の至福である調薬の時を得られるということだった。



無意識に上がりそうになる口角を必死に抑えてノアは敬礼の形をとる。


「要るものは3つ。時間、材料、道具です」




「それさえくだされば、準ずるものを作りましょう」

調薬3→←調薬



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (35 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
143人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

寿司(プロフ) - 如月さん» コメントありがとうございます。お褒めの言葉、とてもありがたいです。続編についてですが修正のため一時公開を制限しておりました。只今パスワードを解除しましたのでお知らせいたします。これからもよろしくお願いします。 (12月15日 22時) (レス) id: 43549444da (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - とても好きな作品でいつも続きが気になっています。続きが気になって読みたいのですがパスワードを解除することはできないでしょうか? (12月15日 17時) (レス) id: a8542e33a5 (このIDを非表示/違反報告)
寿司(プロフ) - アイカさん» コメントありがとうございます!拙文ではありますが楽しんでいただけると嬉しいです。 (11月21日 22時) (レス) id: 43549444da (このIDを非表示/違反報告)
アイカ(プロフ) - 自分の好きな漫画のクロスオーバー!!中々ない組み合わせなのでめちゃくちゃ嬉しいです!! (11月7日 21時) (レス) @page16 id: bda3c5db2c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:寿司 | 作成日時:2023年10月14日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。