制服を脱がして、裸の心で【場地圭介】 (ページ7)

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今日の塾をサボってしまったことを場地圭介に話すと、場地圭介は意外にも申し訳なさそうな顔をしていた。「ちょっと聞くつもりが、案外熱心なヤローだった」と言われて少し面白かったが、その通りだ。
案外熱心な場地圭介をなんとかしてやりたかったんだもん。
「熱心なヤローでごめんね」と言った私に、場地圭介が「ワリィな」と呟いたところで、団地の灯りが灯り始め、もうこんな夜遅くになってしまったのか、と気づく。

「私そろそろ家帰る」

「そうか」

「それ、追試明日？だよね…？頑張ってね」

「オウ！…ありがとな」

場地圭介は、私が思っていたより100倍、愛らしくて何より優しい笑顔でそう言った。
なんだかその時、私はこの日のことを一生忘れないような気がしたし、場地圭介という人物が心に住み着くような感覚が襲った。
場地圭介という植物が、私の心の土に根を張るように、小さな芽を咲かすような感覚だ。
言葉にするのは難しいが、なんとも新しい感覚だった。

「うん。またね」

なんだか、そんなことを思っている自分が小っ恥ずかしくなって急いで家に帰った。
「遅かったわね」と夜ご飯の支度をしながら振り返った母に、何故か包み隠さず塾をサボったことを告げた。
いつも真面目でいい子ちゃんな私の思わぬカミングアウトに、怒るどころか心配する素振りを見せた母だったが、「場地圭介と勉強したんだ」と私が素直に打ち明ければ、「そう。楽しかった？」と、なぜか安心したような顔をした。

後から聞いて知ったのだが、私はこの時初めて、自分から中学の友だちの話を母にしたらしい。
グループ同士の争いや、汚い悪口の飛び交う思春期の女子中学生との付き合いにうまく乗れなかった私だが、場地圭介という人物の存在は、そういった世界とは大きく離れた世界の生き物で、私を自分の世界に連れ出してくれるような気がしていたんだ…と、今になっては思う。

あの日から度々場地圭介に会うたび、前よりさらに優しいトーンで「オウ」と声をかけられるようになった。
ついに校内で対面した時にも同じような対応をされ、隣を歩いていた友だちに「えっ！？場地くんと友だちなの…」と引かれたことは言うまでもない。

このような関係のままズルズルと3ヶ月ほど経ち、大きな変化もないまま夏休みを迎えようとしていた頃のこと。
放課後ノートを提出してみんなよりも遅く下校しようとした時、誰もいない教室でクカクカと眠る場地圭介を見つけた。