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しばらく会話してみて分かったが、場地圭介は意外と話のわかる人だ。
むやみに人を殴ることもあるのかもしれない…が、今のところそういった素振りはほとんど見せない。
真面目に勉強もできるし。
ただ…怖いのだ。やっぱり怖いのには変わりがない。
何を考えているのかさっぱりわからない。
しかし、目の前の場地圭介は、怖がっている私の反応を嫌がっているようにしか見えなかった。それが初めて場地圭介の感情を読み取れた瞬間だった。
綺麗な黒い艶やかな髪から覗いた鋭い目が、私を引き留めて離さない。
…そういう目をするから怖いと思われるんだよ!と言える訳もない。
「…人見知りですから、私」
ぽろっと出た言い訳の言葉は、こんなもんしか思いつかなかったが、場地圭介は妙に納得していた。
「敬語、やめようぜ」
「…ん?」
「堅苦しいだろ」
その時のそれと全く変わらない目つきで呟いた場地圭介は、少し悲しそうにも見えた。
「わかった、やめる」
「オウ」
特に敬語でいる意味も無いので、場地圭介の言うままに私が頷くと、場地圭介は満足げな顔をした。
さっきから何回か見るこの表情で気がついた。場地圭介は、自分の思い通りに事が行くと、あからさまに満足そうな顔をする。
意外と分かり易い人なのかもしれない。
そう思えば、目の前の場地圭介が、野良猫のようにも見えてきて、思わず口を開いてしまった。
「…場地くんは、なんで学校に来ないの」
私が尋ねると、場地圭介は「あぁん?」と威嚇するような態度を見せるが、不思議と今までよりかは怖くなかった。
「面白くねーからに決まってンだろ」
「確かに…面白く無いよね」
想ったよりもシンプルな場地圭介の答えに、うんうんと頷いた。
実際私も、学校を純粋に楽しめているわけでは無かった。
そこそこ友だちもいて、そこそこ勉強も運動もできて、そこそこに楽しんでいると言えばそうなのかもしれないが、友だちも心の底から仲良いかと聞かれるとそういうわけでもない。勉強も運動も、将来のためとは言え、たまには手を抜くということも教えられないためか、ロボットのようにひたすらミッションをこなしている感じが半端ないのだ。
「お前も面白くねェと思ってんのか。なのにガッコー行ってんのか。」
意外そうなリアクションをした場地圭介。
無理もない。
「真面目そうに見える?全然そんなことないよ」
現に今日だって塾をすっぽかしてるのだ。初めてには違いなかったけれど。
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作者名:ポット | 作成日時:2021年9月12日 17時