向日葵みたいな君8

301.秘密ね、秘密 ページ15

「俺もめっっちゃ嬉しいわ」

「そうなの？やった❤」

「会いたい言うたやんけ！
　俺の話をちゃんと聞け！」

「聞いてるよ？
　嬉しかったもん」





まるで昔に戻ったような空気感に
心が解けた時





「秘密ね、秘密」




と彼女が呟く




「秘密？何が」




腕を緩め顔を覗くと
視線を合わせた彼女が唇に人差し指をあて
いたずらっ子の様に笑った






「ちゅーした事も
　ギュッてした事も

　沙耶ちゃんには秘密

　だから、安心してね」







一気に現実に引き戻される






そんな話
今言わんでもええのに

わざわざ言葉にするのは







きっと

俺が心配してると思ってるから

そして

彼女が沙耶に悪いと思っているから









もう一度、俺にギュッと抱きつくと
静かに言った







「最後のワガママ、聞いてくれてありがと

　本当に本当に嬉しいんだよ」






嬉しそうに話している
その声も
体も

震えていて

慌てて抱きしめた






「もう私は
　照史に何にも出来ない
　何も返せない

　だから」





湿った声に俺の視界も歪む






「照史がこれからも幸せに過ごせるように
　ずっと祈ってるからね

　忙しいのは知ってるけど
　あんまり無理しないでね

　体も心も大切にして
　あんまり丈夫じゃないんだからさ」


「……」


「私の世界を広げてくれてありがとう

　ダイビングの楽しさ
　沖縄の海の綺麗さ
　水中から見上げた空の青さ

　今でも忘れてない」


「A」


「一緒に手をつないで歩いたビーチ
　一緒に食べたパスタ
　一緒に飲んだお酒

　全部、幸せすぎる思い出だよ」


「A、やめぇや」


「隣に居てくれて、彼女にしてくれて
　本当にありがとう

　人生で一番幸せな時間だった」


「A！」





引き剥がした彼女は
微笑みながら
静かに泣いていた





「別れの言葉みたいんやめぇや！」

「……伝えておきたいから」

「最後ちゃうから！
　まだこれから、いくらでも時間あるやんけ！

　やっと会えた所やのに
　そんな事言うんやめろや！」





声を荒らげた俺に

微笑んだまま「ごめんね」と呟き

立てた膝に顔を埋めて泣き出した






その時
ドアがバァン！と勢いよく開いた






「ホンマにアホなんか？
　ここまできて怒鳴る意味がわからん」






少し苛ついた表情をして

コンビニの袋を手に
水のペットボトルを傾けながら

流星が部屋に入ってくる





彼女の前にしゃがむと

「姉ちゃん、大丈夫か？」

と小さく膝を抱える彼女の頭を撫でた

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