【112】声はきこえない ページ23
嫌な予感__がした。
じんわりとした汗が流れていく。
A「す、すみません。クリーニング代なら、払いますので」
余所見をして歩いていたAも悪いが、泥酔状態で歩いているこの男にも負がないとは言えない。
ましてやスーツにこぼれたビールは微量なのだから、そこまで気にすることはない気もする。
しかし、自分を見て、徐々に表情をニヤつかせていく男に、Aは嫌な感じしかしなかった。
男1「お前……」
A「は、はい……」
あたりの花見客はすでにできあがっていて、Aたちのことに気付いていない。
たとえ大声を出したとしても、この賑わう会場ではそれは目立つものにはならないだろう。
Aはギュッと手を握りしめた。
男1「お前……えらい美人だな」
A「あ、ありがとうございます」
褒められているのに、いい気がしない。
男1「これ……けっこう高いスーツだけど、別にクリーニング代とかいいよ。それより__」
そこまで言うと、男は急にAに近付いて、その肩をガシッと掴んだ。
そして耳元で囁く。
男1「おにいさんと遊ばね? そうしたらチャラにしてやるよ」
ガタガタと、骨が折れそうなくらいに肩を強くつかまれている。
A(……逃げられない!!!)
Aはそう思った。
A「あの__私、友人と来てますので…無理です。クリーニング代、払いますので」
男「そんなの抜け出しちゃえよ。あっ、そうそう、このスーツって確かブランドだったような気もするんだよねー。あっ、もしかしたらオーダーメイドかもぉー」
男の酒臭い匂い。耳には生暖かい息がかかる。
Aは自分の声がこんなに震えているのをはじめて聞いた。
男1「おにいさんね、こう見えても優しいから大丈夫だよ。君みたいな子だったら、いいホテルとってあげちゃう。ああ、それともお姫様みたいな部屋でやりたいかなぁ〜」
A「や、やめて……やめてください! 人、呼びますよ!?」
男1「ひと? 見てみなよ、あそこの団体なんてカラオケしちゃってるよ? こんな中で叫んだって、君のそのかわゆい声は聞こえないんじゃないかなぁ〜」
A「ううつ……」
男の言う通りだった。
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美優 - 雅臣が何て言ったのか、これからの話が凄く気になります。更新頑張って下さい! (2018年3月19日 10時) (レス) id: 79c6c44529 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - すっごく面白いです。更新待ってます!! (2017年9月25日 7時) (レス) id: e2830e86e4 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になるのですが、このストーリーはこれで終わりなのでしょうか? (2017年3月7日 20時) (レス) id: 4e8990689c (このIDを非表示/違反報告)
☆NATU☆ - この小説大好きです。これからも応援しているので更新頑張ってください!! (2016年10月27日 17時) (レス) id: 1d0876d3b6 (このIDを非表示/違反報告)
智代 - 続ききになるなー!これからも応援してます! (2016年7月16日 23時) (レス) id: a125dbb856 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あややん | 作成日時:2014年11月3日 1時