あなただけに。2

五十一話 ページ1

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全日本フィギュアスケート選手権。


この優勝者はトップでオリンピック出場が確定となる。




今年のオリンピックに、日本選手で参加できるのは３人。私は他の選手に比べると実績も結果も多くは残していない。つまりこの選手権に全てがかかっている。




午後一時から大会が開始される。今は午前の最終練習。






｢A、練習中他の選手に気をつけなさいね｣




コーチに言われてリンクサイドから当たりを見渡すと何人かが敵意を剥き出しにキッと睨んでくる。




結果を残していない割に優勝候補として報道を受けている私を恨めしく思うのは当然。私でも同じ立場だったら彼女達と同じ態度を取ってしまうと思う。







しかも



｢今日の体調は？大丈夫？｣



コーチの隣に当たり前かのように立つゆづくんがいれば尚更だ。








彼はスケート界の女子にとっては王子様のような存在、狙っている人も多くいると聞く。




｢何でいるのゆづくん…｣




呆れ顔で聞くと、会わないって約束はしたけど今日は日本の女子のレベルを見に来たんだもーんと言われてしまい何も言えなくなる。





そのままリンクにあがり、日によって調子が変わってしまう3Aの確認をする。





うん、いい感じ、好調だ。



へへ、と口元が緩み、よしもう一度、と助走をつけようとしてバックで滑っていた時の事だった。





背中に強い衝撃を感じて勢い良く氷に顔を打ち付けた。




｢A！！｣




コーチとゆづくんが私の名前を呼んでいる。すぐさま立ち上がって無事を示そうと思った。









｢、え…？？｣









脚に力が入らない。体が動かせない。





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