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「良ければ案内しよう。向かう途中だから」
男はニコリと笑う
『!ありがとうございます…!よろしくお願いします』
一刻も早く連絡を取れる場所にいかなければ
ありがたい申し出に頭を下げた
「ところでお嬢さん。とても珍しい格好をしているね」
こんな寒空でスーツ姿。疑問に思わない方が可笑しいわ
『あ、はぁ…好きでこんな格好をしてるわけじゃないんです。実は目が覚めたら無一文でここにいまして、私も何がなんだか』
気まずそうに笑うと大柄な男と小柄な男の目が細くなる
「無一文で?」
驚くのも無理はない
男は目を見開いた
『はい…情けない話で』
「………、町にいけば私の営む宿があるから体を温めてはどうですかな?」
『えっ…そんな…悪いです…!』
雪道を薄着で歩き
やっと出会えた人にそんなことを言われて口で言って否定しなければ決心が揺らぐ
「失礼ですが、町に行ったあとの宛は?」
『警察署に行こうと…』
「それなら体を温めたあとでも遅くはないでしょう。何かの縁です遠慮なさらず」
『え、…とぉ…』
引きつりながら笑う
チラリと小柄な男の連れである大柄な男を見た
先程から口を閉ざし続けているが迷惑そうにしている表情でもない
ありがたい申し出である
『なら…お言葉に甘えて…』
「それはそれは」
返答を聞いて小柄な男は再びニッコリと笑う
「よかった」
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