参 我渴望你--Xiao ページ9
鋭い風が流れた。本日は強風のようだ。
場所は璃月の望舒旅館。軽策荘から璃月港に向かっていたのだが、まさかの天候の悪化で一晩泊まることに……いや、困る。
何故なら、私が今金がある身分ではないからだ。今日も常九殿の鉱石を運搬しており、いつも一日で行って帰って来れるからとほぼ手ぶらの状態である。こうなることならもう少し金は持ってきていた。
オーナー殿になんとか話を通してもらおう、と決心した。値切りをするのも璃月の文化、そして契約である。軽策荘は物々交換が主流なため、本音を言うと値切り交渉は不慣れであり苦手だが、背に腹はかえられぬ。やるしかないのだ。
私は鉱石が積まれたくそ重い籠を背負いながら、階段を登る。風に煽られて飛んでいきそうだが、根性で踏ん張る。否、限界はあるが……。
いくら岩元素の神の目を頂いていたとしても、これは少し無理があると思うのだ。
「凡人、そこで何をしている」
「はっ……!? し、失礼致しました!」
突然耳を触った声。聞いたことがある。幼い頃だが、何か大事な約束を交わしたような……しかし、そんなことを考えている場合ではない。
とてつもない威圧感、そして何処か禍々しい力。これを仙人と言わずしてなんと言う。私は相手の顔も見ずに跪いた。仙人相手に、失礼があってはならない。
「我の問いに答えよ。そこで何をしている」
「は……。望舒旅館のオーナー殿に、値切り交渉をしようと思い、足を運んでいた最中でございます」
「……ふん、そうか」
あぁ、答え方はあっているだろうか。失礼な物言いはしていないだろうか? 不安が頭をぐるぐるとよぎる。この不機嫌な言い方、なにか間違っていれば首を飛ばされかねない。そ、それだけは避けなければ……。
「なんだ、我に会いに来たと思ったのだが。貴様、Aであろう」
「は……はい!? なぜ私の名を!?」
いや、あまりにも急展開すぎないか。びっくりして頭を上げてしまった。凡人の身分だが許していただきたい。
目に映った仙人は、少年の姿であった。緑色が印象的な美少年である。腰には鬼の面を下げており、手には美しい翡翠色の石?で出来た槍。
はて……どこかで見たことがあるような……。
「我だ。覚えておらぬのか? 魈だ」
「……魈様!? お久しぶりでございます、またお目にかかれて光栄です!」
彼は魈様、護法夜叉のお一人で……幼い頃、私の子守りを何故か引き受けてくれていたお方だ。
……何故、忘れていた?
177人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「原神」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ