ページ ページ39
言いたいけど、言い出せなくて。ただぎゅっと、万葉の手を握り返すことしかできない私は、なんて無力なのかしら。
｢……お主は、何があっても拙者の味方でいてくれるか？｣
｢……どうして？ そんなの当たり前よ。私が貴方の味方にならない事なんてないわ｣
……私が頼りないから、こんなことを言わせてしまうの？ あぁ、彼のことが分からない。私も同じように、彼を守ることができたなら、こんな顔をさせずにすんだのかしら。
私は不安になって、彼の瞳を見つめた。秋の紅葉をガラス玉に閉じ込めたような紅色。不安に揺れている、気がする。
ここで私が強く言わなければ、壊れてしまいそう。それだけは避けなくては。
私はここで、彼になんと言えばいいの？
｢……万葉｣
｢何、Aが怯える必要はない。お主も知っている通り、拙者はそこそこ腕が立つ。自分のことも、Aのことも、ちゃんと守れるでござるよ｣
そんなこと、言わせたくなくて。
｢あのね、違うの。万葉｣
｢……？ どうかしたでござるか？｣
貴方を守りたくて。不安に揺らいで欲しくない。
ずっと、一緒にいたいだけなの。
｢わ、私も……私も貴方を守れるように、頑張るから。だから、そんな苦しそうな顔しないでよ｣
私は必死の思いで言葉を告げる。故郷を去り、家族や友人を捨ててまで失いたくないと願った彼に、全て1人で背負って欲しくは無かったから。
刹那、カランと音がした。帯留めに何かが留まっている感覚。
｢……A、それ｣
｢……え｣
二人が合わせた目線の先。日光を浴びて透き通るような青を反射する、現代の技術では解明できない神の力。
『神の目』
私の帯留めに下がったそれを、私たち2人含め、この世の人はそう呼称する。
何故私に与えられたかは分からない。けれど、神の目が授かるとき、人の思いはある一定の強さを超えるという。
なら、私が万葉を思う気持ちは偽善だろうと私のためだろうと本物で、強さは神の目を授かるほどということで。
｢……万葉。ねぇ、私……｣
｢……あぁ、うん……。なんだか、不思議な気持ちでごさる。でも……それほどまで強く思ってもらえていると思うと、なんだか照れくさくなるな｣
｢っ……！ そ、そういうことでいい！ 今度は私が守るから！｣
ぱしゃり。
撮影の音がした。みれば旅人が私たちを撮っていたようで、楽しげに微笑んでいた。
｢見て、2人の写真。すごくキラキラしてて綺麗でしょ｣
𝟏𝟑，天秤を揃える -- Cyno→←十二．玉響、揺るぎなく。--Kazuha
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 177人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原神」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
