【オリジナル】おさげちゃんと人誑しくん (ページ48)

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第10話-5 ページ48

「ところで、1つ聞きたかったんだけど。…おさげちゃんは好きでもない奴とキスできちゃう人?」

思いも寄らない質問に、整いかけていた呼吸が乱れ、咳き込む。彼は、真剣な面持ちで此方を見つめていた。

『そ、んな訳…！』

「そうだよねぇ。…なら、どうして俺のキスが欲しかったのかな。……もしかして、俺の事…好きになってくれた?」

いつもの平気で冗談を言う彼の声が、少し震えている様な気がした。

正直、彼への恋心が有るのか無いのか、自分の事だというのにも拘らず、分からない。

返答に迷っていると、彼は「無理しなくて良いよ」とでも言う様に、優しく背中を撫でてきた。

そんな行動一つに、胸がトクン、と微かに高鳴る。

「ごめんごめん、早急だったね。さっきの言葉は気にしないで。…ところでさ、何で突然、"好きだとキスする"なんて話になったのかな。＿＿もしかして、誰かに"そういうこと"された?」

彼の視線が、美月の唇に落とされる。少し低くなった彼の声が、妙に耳を刺激してきた。

『ち、違う。本当に好きなら、手を出す筈だって、聞いたの。…だから、確かめたくて』

「……ねぇ、それ言ったの誰。おさげちゃんに何て事吹き込んでるのさ」

彼は、怒気を孕んだ声で、そう口にした。一(いち)クラスメイトにあらぬ被害を与えない為に、当てて弁解する。

『偶々会話が聞こえただけで、言われた訳じゃないの。でも、霧原…その、もう私の事…』

「…おさげちゃん、俺が何で君とのキスを躊躇ったのか、結局シちゃったのか、考えてよ。そもそも、俺のおさげちゃんへの恋心舐めないでくれる?＿＿そんな簡単に無くなったり消えたりしないから」

基本的におおらかな彼が、こんな風に気が立っているのを見るのは初めてのことで、自分の恋心を侮られた事に、彼は少し怒っている様だった。

「それと、"俺の好意が本物か"、不安で確かめたくなったんだとしても、キスはダメ。俺は好きなモノは大切にする主義なの。好きだから大切にしたいの」

頬を両手で掴まれて、彼と真正面で向き合う。彼の声はいつになく真剣だった。

「だからね、おさげちゃん自身が俺の事好きだって、俺の事が"好きだから"俺とシたいって思ってくれるまでは手を出したくない。…そこ、分かってくれる?」

コツ、と額を突き合わせる様にして、彼が私の顔を覗く。顔の近さを改めて感じて、ぶわ、と頬が赤く染まった。

返事は、と聞かれて、慌てて『うん』と頷いた。