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そのまま適当に会話をし続けていれば、いつの間にか電車は最寄りの1つ前の駅に着いていた。
相変わらず電車内は空いている。
「次で降りるよ…ってどこで降りるかなんてもう知ってるよね」
「うん、今年で3回目だからね」
「え、そんなに行ってたっけ?」
「ちょ、Aちゃん酷くない?!俺結構行ってるよ?!しかも一緒に!」
「ごめんごめん」と言えば彼はムスッとした顔をしていて小さく笑みが零れた。
「人の顔みて笑うなー」
「ふふっ」
「〜〜っだから!Aちゃん!」
「はいはい、車内では静かにね〜?」
右手の人差し指を立てて口元に持っていけば、彼はさらに悶え始めてしまった。
耳まで真っ赤だけど、暑さにやられてる訳ではない、よね。
『次はカワバタ、カワバタです』と車内アナウンスが聞こえ、そろそろか…と鞄と花を持ち直す。
チラリと横を見れば彼はパンパンと頬を両手で叩いていて、思わず「……な、なにしてるの」と聞いてしまった。
「……なんでもねぇよ、ばーか」
「……ばっ?!」
「ふはっ!Aちゃんかーわい!」
「…か、かわっ?!?!」
心配して聞いたのに、突然馬鹿と言われて驚く。
しかもいつも言われないようなことを、言われ慣れていない言葉を、今日に限って言われて頭も回らなくなってしまった。
可愛いって…なんで、、
「バカって言う方がバカなんですー!」と誤魔化すように意地を張って言うと、丁度ホームに着いた電車から早足で降りた。
チラッと見えた彼の顔は少し頬が赤くて、ばーかと心の中でもう1度呟く。
その後すぐ後ろから「ちょ、Aちゃん置いてかないで〜!?」という声が聞こえて、クスッと笑いながら振り返った。
この駅から出ると、後は15分程歩けば“そこ”に着く。
……もうすぐ、なんだ。
彼が来るのを待ちながら、今年で何年目になるんだっけとふとそんなことを考える。
「Aちゃん?」
「え、あ、ごめん、行こっか」
ぼーっとその場で立っていたら、優しい声色で彼に名前を呼ばれた。
いけないいけない、これじゃ他の人の邪魔になるよね。
彼の後ろに続いて階段を昇り始める。
電車の中はとても涼しかったのに、降りた瞬間夏の暑さがぶわっと体中に纒わり付いてきて。
一瞬クラっとしてしまう程だった。
空には主張の激しい日差しと力強い入道雲があって、見てるだけでむさ苦しく感じる。
雨じゃなくて良かった……となぜかそう思った。
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れな(プロフ) - しっぽうさぎさん» 素敵な感想ありがとうございます!とっても嬉しいお言葉ばかりで…書き手冥利に尽きます´ `* これからもまったり更新ですが最後までよろしくお願いします!高校時代はまだ公式さんから何も言われてなかったので、自由に想像しながら書けてたんですけど…焦ってます;; (2019年2月16日 9時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
しっぽうさぎ - 読み始めた瞬間『あ、この作品好きだ。』と感じました。久々の感覚と、久々に好みな作品を見つけられて最高に嬉しいです。関係無い話ですが、私も前におそ松さんの学生ストーリーの作品を作って、あら公式と違うわとなりました。…共感です。笑 (2019年2月14日 18時) (レス) id: dc9d359d93 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 来夢*゚さん» 初めまして。素敵な感想ありがとうございます!キュンとくる内容になってるか微妙だったのでそう言って貰えてとても安心してます。のんびり更新な感じではありますがどうぞ最後までお付き合いよろしくお願いします ^ ^ (2018年5月6日 6時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
来夢*゚(プロフ) - 初めまして。学生特有の甘酸っぱい恋物語に当方毎回楽しみにしながらキュンキュンさせてもらってます(〃ω〃) これからも頑張ってくださいね。応援してます! (2018年5月5日 16時) (レス) id: 522dbc585e (このIDを非表示/違反報告)
万珠沙華(プロフ) - レスありがとうございます!! (2018年4月22日 20時) (レス) id: a8300dcf2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れな | 作成日時:2018年4月19日 19時