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「おそ松くん、そんな格好もするんだね」
「あぁ、うん、まぁな、」
「……カッコいいよ」
「………あんがと」
私も思ってたことをサラリと本人に言う彼女。
目を細めながら綺麗に笑う姿は、とても様になる。
…………羨ましい。
そんな思いが、じわりじわりと頭を侵食していった。
「サザナミも、似合ってんじゃん、それ」
「そう、かな、、……ありがとう」
あぁ、やっぱり、この空気は嫌いだ。
まるで、私1人だけ、違う世界にいるみたい。
彼女の態度、表情、雰囲気、その全てがある1つの答えへと導いている。
きっと、そんなことは彼も気づいてるだろうし、分かっているはずだ。
「……今、帰り、なんだよね?」
「……うん、そうだよ」
「1人で平気か?」
「大丈夫だよ。いつもの事だし」
“いつも”とはどういうことだろうか。
なにか事情があると悟ったのに、私はそれを聞かないで「…そうなんだ」とだけ返した。
…………でも、彼は違った。
「大丈夫じゃねぇだろ、女1人でこんな暗い道歩くなんて」
「ううん、ほんとに、大丈夫だか──」
「送ってく」
「「えっ、」」
彼の発言に2人して同じ反応をしてしまう。
なにを考えてるの、この人は。
……だって、彼は彼女の、フウカのことを、、
「……わ、悪いよ!てか、今はAのこと送ってあげてるんでしょ?ダメだよ、ちゃんと家まで送り届けなきゃ。」
「だったら、サザナミも一緒に来ればいーじゃん」
「え、」
「いや、でも、」
「はぁ…こんなんじゃ埒が明かねぇ」
頭をぐしゃぐしゃと痒くと、彼は彼女の腕を取り、「Aちゃん、行くよ」と先を歩き始めてしまった。
少しずつ離れていく2人の後ろ姿を、その場でずっと見つめる。
1人、後ろに置いていかれた私は、なぜかとても虚しく感じてしまって。
歩き出すのが、一歩を踏み出すのが、怖いと、
2人の後を追うのが、恐いと、そう思ってしまった。
「はぁ…」と溜め息を吐きながら、さっきのフウカの表情を思い出す。
私の横を通り過ぎた時の彼女の顔は、街灯の灯りに照らされてハッキリと見えた。
(…………嬉しそう、だったな、)
鉛のように重たくなってしまった足を、なんとか動かしながら、どこか他人事のようにそう思う。
気づけば、さっきまでの浮かれていた気分はどこへやら、すっかり体も、頭も、心も、冷めきってしまっていた。
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れな(プロフ) - しっぽうさぎさん» 素敵な感想ありがとうございます!とっても嬉しいお言葉ばかりで…書き手冥利に尽きます´ `* これからもまったり更新ですが最後までよろしくお願いします!高校時代はまだ公式さんから何も言われてなかったので、自由に想像しながら書けてたんですけど…焦ってます;; (2019年2月16日 9時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
しっぽうさぎ - 読み始めた瞬間『あ、この作品好きだ。』と感じました。久々の感覚と、久々に好みな作品を見つけられて最高に嬉しいです。関係無い話ですが、私も前におそ松さんの学生ストーリーの作品を作って、あら公式と違うわとなりました。…共感です。笑 (2019年2月14日 18時) (レス) id: dc9d359d93 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 来夢*゚さん» 初めまして。素敵な感想ありがとうございます!キュンとくる内容になってるか微妙だったのでそう言って貰えてとても安心してます。のんびり更新な感じではありますがどうぞ最後までお付き合いよろしくお願いします ^ ^ (2018年5月6日 6時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
来夢*゚(プロフ) - 初めまして。学生特有の甘酸っぱい恋物語に当方毎回楽しみにしながらキュンキュンさせてもらってます(〃ω〃) これからも頑張ってくださいね。応援してます! (2018年5月5日 16時) (レス) id: 522dbc585e (このIDを非表示/違反報告)
万珠沙華(プロフ) - レスありがとうございます!! (2018年4月22日 20時) (レス) id: a8300dcf2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れな | 作成日時:2018年4月19日 19時