帰ってきたらブラック本丸でした5

208話 ページ14

会場内があっという間に殺気立っていく

見渡すと各本丸の審神者の膝の上、又は近くで犬が威嚇するように鼻先に皺を寄せて犬歯をむき出しにし、低い姿勢で鋭い眼光を前方へ投げ掛けている


普段の可愛らしいルックスからは想像も出来ない野性味の溢れる姿に、何人かは悲鳴を上げて泣き出した


会場内がもっと騒がしくなって収拾がつかなくなるのではと尼崎さんを見るけど、目を見開いたまま固まっている姿を見て何も聞けなかった


私の本丸のこんのすけもそうなのかと顔を覗き込むと、目はまん丸に開いて口を半開きにして尼崎さんと同じように固まっている


ごめんって思いながら背に手を置いて揺すると、ゆったりとした動きで私の顔を見上げ、その表情が次第に強張っていく様子がスローモーションのように感じた



ゆっくりと発せられた一言を理解するのに時間がかかる




こ「審神者の魂の一片を喰らったのです」




魂の、一片


普通の生活では小説や漫画なんかでしか目にしない言葉



『それはどういう…』


私の声にこんのすけは目を閉じてなんとか落ち着こうと無理をしている様子が見て取れた

ゆっくりと深呼吸を繰り返すこんのすけの背をさすっていると、やがて目を開いて私をしっかり見つめ、その口を開く


こ「…魂の一片を喰らったので、あの個体は人型を保っている。一時的な変化では無いのです。あの個体の意思で自由自在に人型になれる」


膝丸「審神者の魂とは、どういう事だ？」


様子を伺っていたのか今まで黙っていた膝丸さんが辛抱ならんと言ったように膝に肘を付いて前のめり気味にこんのすけに質問した


こ「5年前の事故ですから、もしかしたらその時分に顕現なされた刀剣男士は耳にした事があるかと思われます。
長年、重度の危険性が問題視されていた黒本丸の審神者が己との縁を故意的に断ち切った自本丸の刀剣男士によって殺害されるという事件が起きました。」



加州「故意的にって、そんな事可能なの？俺、割と最初の方に顕現してるけど知らないよ？」



こ「一振りの持つ最大の神力を持ってしても主との縁は切れません。ですが何振りかが協力していたとしたら可能なのです。勿論それでも無事ではいられません。一方的に縁を切るという行為であっという間に戦線崩壊の状態になってしまいます。

同じ事が起こらないように詳細は審神者のみにしか伝えていませんから。
【本丸内審神者刺殺事故】こう言った方が皆さんなら分かるのでは？」

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