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『…李依なるせ?』
「そう!もしかして知らないの?」
『知らなくても私の人生に関係なくない?』
「えー?!ライバルだよ?!別学部のライバル!」
『…他人なんてどうでもいいよ』
私の言葉にめいが膨れっ面をする。
知ってようが知らまいがどうでもいいとは思うけど、別に知らないとは言ってなくない?
他学部の事だってそれなりに噂は耳に入る。
李依なるせ。
性別不詳の成績上位者。
男なのか女なのかα、β、Ωなのか 他人に全く知られていない。
ただ、噂では成績上位故にα説が有力であると言われている。
「そういえばこの前あらきさんの所に勉強教えて貰いに行ったらAの話めっちゃしてくれたよ」
『えっなにそれ、』
「αなのにって言ったらめっちゃ怒られるけど、一般的なαと違って自分の性を鼻にかけてないから一緒に居たくなるって」
『…そんなの話してたの?』
「わかるなあって思った!後はねえ、あらきさんの幼馴染がΩなんだって。まだヒート来てないみたいらしいよ」
至極どうでもいい話では…?
ふうん、と適当な返答をして、甘ったるいココアの入ったカップに口を付ける。
口の中に広がる甘さに少しだけ顔を顰めた。
刹那、校内に響き渡る音でチャイムが鳴る。
『めい、次って授業じゃないの?』
「あ!そうだ!!やば!行かなきゃ!ありがとA!めちゃくちゃ助かった!!」
『いーえ。転ばないように気をつけなね』
バタバタと荷物を掻き集めては鞄に詰め込み、駆け足で講義室に向かっていく姿をぼんやりと見詰めた。
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作者名:弥雲 | 作成日時:2021年9月24日 11時