nectar《nrs》 (ページ18)

今日:6 hit、昨日:16 hit、合計:50,574 hit

＃１７ページ18

.

『干渉してくるな』

「別にしてないけど。日夜さんが過剰に反応しすぎなんじゃなくて？」

授業の空きコマの時間、いつもであれば自習室かカフェで勉強したり、めいと一緒に居たりするのに今日は違う。

薄暗い空き教室で李依なるせと2人きり。

向こうはヒートがおわったはずなのに、頭が痛むほどの甘い桃の香りを漂わせていた。

『お願いだから苦しめないでよ』

「お前は何に苦しめられてるの？俺？それとも俺のフェロモン？自分の中に溢れるほど溜まった本能？」

淡々と述べられる言葉達は容赦なく私に刺さり、自分の考えていることが余計分からなくなった。

嫌いなのは何に対して？

私は何に抗ってるの？

「忘れられない癖に」

彼の言う通りだ。

勉強をしていようが、めいと話してようが甘い香りに身体が反応を示す。

忘れなきゃいけないと思えば思う程にきつく香り、相手を求める。

『傷付けたくない』

「傷付きたくないじゃなくて？」

どうか、どうかそれ以上口を開かないで欲しい。

『ちがう、』

「ふ、…天下のα様はプライドが違うねえ。傷付けたくないじゃないの。お前は、本能に駆られてる自分を認めたくないんだよ、自分のプライドを傷付けたくないんだよ」

初めは嘲笑う様な口ぶりだった彼が言葉を重ねるうちに、怒りを顕著に表すようになっていて、言葉にはしていないけれど “ 許さない ” と言っているようなものだった。

「逃げんなよ、クソが」

人に羨まられて生きてきた私には、酷く重たく感じ、まるで私の周囲の空気が全て無くなったような感覚に陥った。

.