【忍たま】あこがれ 参

いつも通りじゃない 1 ページ9

勘「お！おはよう、A。」



翌朝、起床した勘右衛門が井戸へ向かうと前日に姿の無かったAがそこに居た。



『お、おはよう……』

勘「今日はAの方が早起きかぁ」



負けたなぁ、と言い今度は勘右衛門が顔を洗い始める。
Aもその横で濡れた顔を拭きながら、何か気まずいような複雑な気持ちになっていた。



(そういえば、私って昨日はどういう理由で休んだ事になっているんだろう？)



まさか木下や山本シナが、包み隠さず全てを話すなんて事は有り得ない。
そうすると、単純に体調不良を引きずっていたという事になっていたのか？だとしたら、医務室にも自室にも居なかったのは不自然。



勘「いやぁ、Aも大変だったなぁ？」

『えっ、……何？』

勘「何って、具合悪いのに実習に出されてさ。
今は大丈夫なのか？」

『あ、あぁ……実習ね。うん、大丈夫大丈夫……』



実習に出された事になっていたのか、と内心ほっとしながら話を合わせる。
昨日の授業は、と勘右衛門が教えてくれるのを聞きながら長屋へ戻る。
その途中で八左ヱ門や三郎、雷蔵、不機嫌な兵助とすれ違い同様の心配をされた。



『もう大丈夫だよ』



そう言えば「良かった」と安心したように返された。
自室へ戻り、襖を閉めると力無くしゃがみ込んだ。



『……嘘、本当はあまり大丈夫じゃない。』



こちらへ戻って来れば多少辛くても今まで通りに過ごせるはずだった……のだが、思っていたよりも身体がしんどい。
それをみんなに悟られないようにするのも意外と難儀な事で。
「いつも通り」に挨拶を交わす同級生達を思い浮かべると……



『…今、初めて男に生まれてたら良かったのにと思った。』



ぽつり、無意識に呟くとはっと我に返り慌てて口を塞いだ。
誰も聞くはずもないだろうと思いながら溜息を吐く。



『……やっぱり、覚悟が足りないんだろうな』

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