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「ふふっ、朔間先輩は先生の事が好きなんだね」



「ははっ、そうだな、めっちゃ好き♪」



零はニコニコと笑いAを後ろから抱きしめた。反対にAは諦めたかのような表情で零を軽くあしらった。



「仕方ないな、僕はおじゃま虫みたいだし、退散しようかな」



英智くんは「またね」と手を振り出ていってしまった。




「ちょっと零くん?」




「んな事いいから俺にもお茶ちょ〜だい」




「…………はぁ」




英智くんが座っていた席に座り、椅子を引き寄せこちらの近くにやってきた。



「零くん近いって」



「いつもの事だろ?ほら、早くお茶♪」



「はぁ………やめてよね、零くん。距離感を誤っちゃ駄目」



紅茶とお菓子を前に差し出し自分も紅茶に口をつけた。





「……で?どうしたの、疲れたんでしょう?」




疲れた顔をしているよと言えば、少し驚いた顔をし、力無く笑い彼は私の肩に頭を乗せて大きく深呼吸をした。海外を飛び回っていたからだろう。まだ高校生なのに大変だ。

いや、大変なんて軽い表現ではなくもっと重たいものだろうが……。



「また海外に行くの?」



「まあ、そうだな。俺じゃなきゃ駄目だし」



「そっか…………頑張ってるね、零くん」



よしよしと頭を撫でると肩にに顔をスリスリと擦り付けてきた。



「Aと一緒にいると子どもになった気分だわ……」



「こどもでしょ、何言ってるのよ」



「Aと一緒にいるとダメ人間になりそう」




「なっても私は怒らないわよ」



ニコッと笑えば、珍しく零くんはしかめっ面をし、こしょこしょ話をするような距離まで顔を近付けられ、体が固まってしまう。



「………なあ、先生。今度俺が帰ってきたら、めいいっぱい俺の事甘やかしてくれよ」



手をぎゅっと握られ、もうひとつの手の甲にキスを落とされる。何が起きてるのか分からずそのまま固まっていると、くつくつと笑い声が聞こえ我に戻った。




「驚いた?あはははっ可愛い♪」



「ッ!」



一気に自分の顔が赤くなるのが分かる。
私の顔を見たのか零くんは少し驚いた顔でこちらを凝視してきた。



「ッ……」



「……こっち見るな馬鹿」



バシッと肩を叩き距離を突き放した。



「はぁ……まじで最悪、お坊ちゃんに心乱されるなんて」



私はぐしゃぐしゃと頭を掻き大きくため息をついた。



「わかった、いいよわよ、たっぷり甘やかしてあげる」

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作者名:X | 作成日時:2023年5月5日 21時

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