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あれから数日後。東京タワーの下見の日になった。30分ほど早く着いてしまったので、改札口でなかむを待つことに。だが丁度5分経った頃、なかむからもうすぐ着くとの連絡が来た。顔をあげて辺りを見回すと、こちらに手を振りながら走ってくる人影が見える。
「Aー！ごめん待った？」
「ううん大丈夫。それにしても早いね？」
「俺の方が早く着くと思って家出たのに、Aが30分も早く着いてたから走ってきた…」
「あら、急がせてごめんね」
「俺も楽しみにしてたから大丈夫！行こ！」
なかむは嬉々として東京タワーの方へと向かい始めた。私は急いで彼に追いつき、並んで歩く。
最近は編集作業に追われてばかりいたから、ゆっくり外に出かけるのは随分久々だ。相変わらず都内は人が多い。さんさんと降り注ぐ太陽の光が眩しくて、私は思わず目を細めた。
「多分夕方までには終わると思うから、それから買い物行こ。俺前から行きたいところあってさー」
さすがなかむといったところだろうか。気まずい空気になることなど一切なく、逆にすらすら話題が出てくるから感嘆まで覚える。東京タワーまで数分の道なのに、話題は2転3転して目的地に到着した。
「こっちの外階段から入れるって……A。本当に平気？」
「…ちょっと怖い」
「そこらで待ってる？」
「ううん、一緒に行くよ。もう決めたから」
本音を言うと過去の記憶がちらついて気が気ではない。それでも行くと決めたのは私だから。それに上に行ってみないと何も始まらない。
隣で不安そうな表情をするなかむの裾を、くいっと引っ張って足を踏み出す。
「行こ。無理だったら…また助けてね」
「任せてよ。俺はAの…幼馴染なんだから。一体いつからAのこと気にかけてると思ってんの？」
「ふふ、それもそうか」
こうして私たちは、東京タワーの人達が指定した会議室へと向かい始めた。東京タワーの外周をぐるりと囲う、外階段を使って。
そしてなんと私は上りきったのだ。上り階段は下を見る体力的な余裕がないため、先を行くなかむの背中に目線を集中させていたら、思ったよりも高所にいるという実感が湧かなかった。
その後の企画会議では、外が見える場所に行く必要がある際はなかむに任せ、私は基本的に会議室の中にいた。先方も私の高所恐怖症に理解を示してくれたため、会議はなんの滞りもなく終わった。
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作者名：ピースラワー | 作成日時：2024年4月14日 19時
