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掃討戦からもう二日たとうとしている


ぼんやりと揺れる木々を窓を通して見ていた





あれから私は一日中眠っていた、らしい


あの青い空間にいたのはとても短く感じられたのに


あの子供の言った言葉が耳の奥から聞こえてくる




爐い弔あなたは消える




目を閉じて眠ればきっとまた、あの子が出てくる

そう考えると怖くて眠ることが出来なかった


袖の通されていない空っぽになった左腕の肘の部分をつかむ




(消える、なんて、そんなの有り得ない。だってあなたが)




病室のドアが開けられる音で現実に一気に引き戻される


そっちに目を向ければ、いたのは



「おはよ、起きてた?」



「班長、...」



糸目の班長の姿があった



「今ちょうど休憩中だからさ、暇してるであろう(人1)に差し入れと思って」



そう言って渡してきたのは紙袋

中にはDVDプレイヤーと最近出たと思われるDVDと本


「俺が入院した時にお世話になったんだけどよければ貸すよ」


「班長って本読んだりするんですね」


「意外だった?」


「はい」


紙袋をサイドテーブルに置こうと左腕を伸ばそうとしたが


(......あ、ないんだった)


それに気づいて右手でサイドテーブルの上に置く


利き手じゃないなら別に大丈夫だろうという考えは間違っていたと今さら痛感させられた


「他の人は大丈夫でしたか」


班長は少しうつむいた様子で私の声が届いていないらしく返事がない


「班長?」


「...ああ、ごめん、ごめん。ぼーっとしてた。どうかした?」


上げた顔にはいつもの笑顔
しかし、目の下には若干クマができている


「...疲れてますか?」


その問に曖昧に微笑んだ


「どうだろう、大丈夫だよ」


まただ、あの、仮面のような笑み
そして私に長い腕が伸びてくれば次には班長の匂いに包まれる


「......ごめん、ちょっとだけ、さ」



このままで、と小さくなった声と共に肩に額が押し付けられる




(...わからない)




自分を優しく抱き寄せるこの腕の温度も、恋人ごっこの関係も、班長も、自分自身も



何もかもがぐちゃぐちゃで、気が狂いそうになる


背中に右腕を回せずただ人形のようにいた私を




あの子供が見ていた

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設定タグ:東京喰種 , 伊東倉元   
作品ジャンル:アニメ
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みなも(プロフ) - コメントありがとうございます!!頑張ります! (2016年8月6日 10時) (レス) id: ce51c230b3 (このIDを非表示/違反報告)
双子よ~ - 面白い!更新ガンバ (2016年8月5日 0時) (レス) id: f8c2c9f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
みなも(プロフ) - あやかさんコメントありがとうございます!!これからまた更新していくのでよろしくお願いします! (2016年7月17日 23時) (レス) id: ce51c230b3 (このIDを非表示/違反報告)
みなも(プロフ) - ナイトさん、コメントありがとうございます!!更新出来ずすみません、これからまたなんとか頑張ります! (2016年7月17日 23時) (レス) id: ce51c230b3 (このIDを非表示/違反報告)
みなも(プロフ) - Seaさん、コメントありがとうございます!!頑張ります! (2016年7月17日 23時) (レス) id: ce51c230b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫苑 | 作成日時:2016年2月8日 20時

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