【番外編】かんざし ページ35
｢よもや、、、｣
｢おやおや、元気な嬢ちゃんだったねぃ｣
｢あんたはお逃げになんないのかい？｣と聞いてくる店主に首を横に振った。
｢店主、これを欲しいのだが、買ってもいいか｣
指を指した。
指を指した先は先程のかんざしだった。
店主は少し目を開けて、驚いていた。
よっぽどの金持ちでなければこの簪は買われないのだろう、いやそもそも、こんな額の簪をこの場所に置いていること自体がおかしいのだ。
今は大正､皆が皆お金を持っているわけでもなく、働いて生活するのがやっとの人もいるこの中なんだ。
生憎、俺は必然的に鬼殺隊にいて何不自由なく生活をできていれるのだから、これを手に入れられないわけが無い。
｢､､､､これは、、｣
｢これはのぉ、、昔、昔な、ある女が私に預けてきたんだ｣
結んだ口から少しづつ出てきた言葉がぽつりぽつりと落とされていった。
｢むぅ？ある女？｣
｢そうだ、これは寒い、、寒い雪の日だったかの｣
私が空から降る雪を見ながら店番をしていたところ、
暖簾をめくって入ってきた女がいた。
私は見間違えたかと思ったよ。雪に溶けてしまうようなほど肌は白く、そして瞳は緑深く、まるでビー玉を埋め込んだように透明な女、例えるなら、先程出た嬢ちゃんをまるまる大人にしたような感じだった。
そんな瞳から溢れんばかりの涙を溜めてはこう言ったんだ。
｢これを、これを、買い取ってれませんか、、！！｣
髪から外され、手に持たれたそのものは、銀色の枝に桜が金色で現された簪だった。
うちは買取屋でもないが、彼女はこの店がなんなのか分からない遠い場所からやってきたのがわかってしまった。
これを売ったら確実にもう働かなくていいだろう、そこまで凝っている細工なのだ。
しかし、何故涙をためてまで売り払おうとするのか。
私は善人でもなければ悪人でもない。
けど、これを売ってしまえば私の何かは確実に変わるだろうと確信しておりながら疑問を先に解決させたくて聞いてしまった。
｢あんた、、そんな顔でものを渡されても
私がまるで悪党みたいじゃないか、そんな顔するぐらいなら辞めておくれ｣
｢お願いです、価値はあるはずです、できるだけ、高く、
お願いします！本当に、時間が無いんです！！｣
｢価値があるっていってもね、うちは買取屋じゃないから買い取ることもできないわ｣
そういえば、彼女の時間は止まってしまったのかのように、彼女の動きも止まってしまった。
上から下をよく見れば女は裸足だった
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作者名：ハクリン☆（中二病ＪC） x他1人 | 作成日時：2019年8月3日 22時
