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発端 ページ22

砂川A。

第一印象なんてものは覚えていないが、生真面目だった。
その年頃の高校生には珍しいほどだっただろう。

対して俺は友達に囲まれ、大声で笑っているような
それでいて素行はそれほど良くない対照的なタイプだった。

だからか知らないが、俺はAに惹かれていたようで。




ーーーーー
「…くん、宇髄くん」

『…あ?』

「大丈夫?寝れてる?」

授業中に居眠りしていたらしい。
こいつ…砂川Aと席が隣りあってからというもの毎回起こされる。

しかも二言目には心配だ。

普通といえば普通かもしれないが、なんか変なやつ。

『地味に寝不足だから寝かせてくんね…』

「うん。あとでノート写す?」

また寝るのは止めねぇのかよ…

『やっぱいい。居眠りはよくねぇし』

「そうだね」

んー…変なやつだな。無関心なのか?
いや、無関心だったらわざわざ起こしたりしねぇよな。


人間は無いものねだりな生き物だ。

だから自分に無いものや、理解できないものを持つ人間が気になる。
きっと、欲しくなる。
俺ももちろん人間だから、そうだった。

それで、あいつを狂わせた。



『…つまんねぇよな』

「え?」

Aは、唐突な呼びかけに瞬きをした。

『毎日毎日同じことして、つまんねぇ』

「そうだね」

『たまには、違うことしてぇよな』

「そうだね」

規則的な返事。
だが、話を聞いていないわけではないようだった。

それから話は早かった。


簡単に言えば、俺たちは学校を抜け出した。

砂川Aはなぜこれほど簡単についてきたのか俺にも分からなかったし、そもそもこんな馬鹿げたことをしていること自体不思議だった。
おそらくは、真面目に生きてきたAも、俺みたいなのが気になったのだろう。

「どこ行くの?」

『んー、とりあえず遠く行くか』

電車に乗って終点まで行った。
Aはずっとそわそわしていた。

終点駅には、大して物珍しくも感動的でもない海岸があるくらいで、わざわざ来るにはつまらない。

『…つまんねぇよな』

「そうかもね」

『もうちょっと派手になると思ったんだけどな』

「肝が冷えただけだった」

軽く笑うAを見て思った。
終わらせたくない。

だから、腕を引いて唇を重ねた。

拒絶はされない。心のどこかで確信していた。

陳腐といえば陳腐だが、こういうのも悪くないと無責任に思った。

*→←奏でる



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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

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