検索窓
今日:14 hit、昨日:10 hit、合計:15,638 hit

奏でる ページ21

「やっと全部弾けるようになったんだよ。聴いてく?」

『いや、なんで夜の学校の音楽室でピアノ弾くの。
癖なの?』

「…知らね」

あ、ごまかした。

『思い出した。あの時は、ベートーベンが肖像画から出てきて弾いてるのかと思った』

「出てくるとしたらリストだけどな」

宇髄くんは嬉しそうに笑った。
それから、適当に和音を鳴らしだす。


「で、忘れ物でも取りに来た?」

『ううん、仕事…そしたら、聴こえて』

「どこで俺って分かったんだよ」

うーん、どこだろうか。

初めから分かっていたような、分かっていなかったような。

「会いに来てくれたのかって、思ったけど」

月明かりが長い指を白く浮かび上がらせる。
それが怪しくうごめくと、繊細な音が立て続けに鳴らされる。

『別に、そういうわけじゃない』

「そうかよ」

実際どうなのか分からない。
入っていくべきではないだろうと思っていた。

夜も遅いし、二人きりになるし、警備員さんはどこにいるか分からない。

それなのに、のこのこ足を踏み入れた。

「お前、警戒心あるのか無いのか分かんねぇな。
もっと自分大事にしろよ」

もっともなことだが、宇髄くんが言うのも筋違いなような気もする。

『分かってるよ…でも、そんなんだから駄目なんじゃないの?』

「は」

『時々、何かの気まぐれみたいに他人行儀になって』

滅茶苦茶な言い草かもしれないけれど、本心だ。

だから、寂しかったのに。



だから、離れていったのに。


『…ごめん、じゃあ私帰るから』

「待てよ、こんな時間に危ねぇだろ」

…なんのつもり?



ーーーーー

「それとこれとは話が別だろ。これでお前に何かあったら気分悪いじゃねぇか」

『ご親切にどうも』

別にそこまで不審がってはいない。
宇髄くんにしては珍しいくらいのシリアス声だし。

「気ィ付けろよ」

『うん…』

でも、真意はよく分からない。

感情を押し殺したような顔だ。

『今度、ピアノ聴かせてくれる?』

「…おう」

なんか、調子が狂うなあ。
宇髄くんと居て調子が狂わないときなんてなかったけれど。

発端→←聴く



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (29 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
46人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。