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聴く ページ20

宇髄くんはたまに、高校生には見えないときがある。


「愛の夢第三番。リストの」

『そう、それそれ』

曲名は聴いたことがなかったが、知ったかぶりをしてしまう。

「そんなに上手くねぇのに。恥ずかし」

『…綺麗だったよ』

「そりゃどうも」

彼は鍵盤に目を移してちょっと笑った。
鍵盤に触ると別人のようになるんだなぁ。

『なんで、こんな時間に弾いてたの?』

「俺も忘れ物取りに来たんだよ。多分お前と同じ。
そしたら、音楽室開いてんだよ。地味に不用心だよな」

『てか、ピアノ弾けたんだね』

「今更言うのかよ…まぁな。楽器は得意」

そういえば軽音部に助っ人参加とかしてたような。
うーん、多才だ。貴族なんだろうか。


と、

「…あ、やべ」

宇髄くんはいきなり電気を消して、ドアを閉めた。
それから、手招きをする。

『どうしたの?』

「聞こえねぇのかよ。警備員の足音。
見つかったらやべえって」

聞こえ…てきた。
階段を上ってきているようだった。

宇髄くんは私の手を引いて、ピアノの下に潜り込む。

きつい…

「きっつ…悪いな」

当たり前だが、近い。
体格差がありすぎて抱きすくめられているみたいになる。

男慣れしていない私が冷静であるはずがない。


「砂川」

『…』

どうしよう、顔を見られたくない。

「おい、砂川A」

しかし、顎に手を添えられて、顔を上げることになる。
至近距離でばっちり目が合う。

宇髄くんは一瞬だけ微笑んだように見えた。

「もう出ていいぜ」

頭ぶつけないようにな、と腕で屋根をつくってくれる。

『あ、ありがとう…』

分かりやすく動揺してるし、心臓の音も聞こえていてもおかしくないくらいうるさい。

「俺、耳良いんだよ」

『え』

やっぱり聞こえてた!?

「だから足音とかよく分かるんだよな」

『あ、そういうこと…』

なんだろう、笑顔が意味ありげな感じがする。
意識しすぎかな…

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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

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