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「早いね。待った?」
『全然。行こうぜ』
「うん」
俺が早く来て待っていたのが嬉しいのか、
Aははにかみながら隣に並んだ。
行ってみたいけど入りにくいおしゃれなカフェがあって、みたいなのは口実で、デートと名がつかないだけのデートだった。
『…可愛い』
「え?」
『私服』
「…ありがとう」
実際、初めて見る私服姿は可愛らしいと思った。
恥ずかしそうに目を逸らすのも。
服だけじゃない。髪はゆるく巻いて、自然に見える化粧をして。
普段から休日はこんな感じなのかもしれないが…
いや、きっとデートだからだろう。
意識してんだよな、可愛い。
「その…ごめんね」
『何』
「男の人と二人で出かけるとかあんまりなくて…
緊張してる、私。楽しくできないかも」
わざわざそんな断りを入れる必要はないのに。
でも、Aらしいといえばらしい。
『大丈夫、俺も緊張してるから』
「宇髄くんが?嘘」
『嘘じゃねえよ?そう見えないだけ。
てことでお互い様だから、心配すんな』
「うん…!」
あぁ、落ちた。
どこか冷静にそんなことを思う俺はおかしいだろうか。
別に遊んでやろうとか、手ごめにしてやろうとかそんなことは全く思わないが、そこそこ女慣れしているとこんなことを考えてしまうんだな。正直、嬉しくはない。
「でも、全くそうには見えないね。すごい」
『すごくねぇよ』
その時の俺は恋愛などというものには飽きていたのかもしれない。
定かではないが。
砂川Aに惹かれていたことだけは、確かだ。
それから、何度も一緒に出かけて、何度も抱き合って、
なけなしの倫理観から一線を越えることはなかったものの
それもほぼギリギリだった。
簡単に言えば、それなりに深い仲だった。
でも、常に違和感が付きまとった。
ただの幸せなお付き合いですよ。そう言えれば良かった。
残念なことに、その違和感に気づかないほどAも鈍感ではなかった。
それから、あいつは忽然と消えた。
耐えられなかったのか、やっぱり。
それでいいか。俺といたら不幸になりそうだしな、あいつ。
そう思って、一度諦めた。
また出会ってしまう日までは。
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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)
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