冨岡さん、人違いです！【鬼滅の刃】

友達 ページ23

『…帰るね』

「あぁ」

なぜか落ち込んだ気持ちで立ち上がる。
と、何かを踏みそうになって足を引っ込める。

「どうした」

『なんか、踏みそうになって…写真？』

「アルバムから落ちたのか…」

少しだけ気になった。

『みーせて』

覗き込むと、綺麗な女の人が笑っていた。

『…誰？』

「安心してくれ、姉だ」

安心ってなんだ。

言われてみれば、品のある顔立ちは似ている気がする。
表情が柔らかすぎて分からないけれど。

『へぇ、お姉さんいたんだ』

「あぁ。今は結婚して遠いところに住んでいる」

『すごく美人…』

「そうだろう。今週末会いに来るんだ」

『えっ』

なにそれ、聞いてない！当たり前だけど。

「柏原さんの話をしたら、会ってみたいと」

『ええっ』

それくらい教えてくれてもいいんじゃないの。

「どうだろう」

『…い、いいけど』

私も、なんとなくお姉さんを見てみたい。

そしてお姉さんといる冨岡さんもどんな感じか見てみたい。

色んな意味で浮世離れしたような冨岡さんだ。家族がいるという時点で変な感じがする。
いや、いるのはいるんだろうけど。

「良かった、姉さんも喜ぶ。
義勇にも友達がちゃんといるのねって」

…やっぱりそういう心配されるんだ。

『友達かは』

「友達じゃないのか？」

『冨岡さんがそう思うならそれでいいけど、
友達かぁ…なんか幼稚じゃない？』

間違ってはないけど、わざわざ友達って言うのも変な感じ。

「そうか？いいと思う。友達」

響きを噛み締めるように、口に出して笑う。
本当に、子供みたいだなあ。

友達いなかったのかな…

『…うん、そうだよね。友達』

「まぁ、同僚と言う方がしっくり来るのかもしれないな」

おい、私が効かせた気を返せ。
冨岡さんは怖い顔をする私なんて露知らず、口の中でぶつぶつ言葉を反芻する。考え事をする時の癖だ。

『友達でも同僚でもなんでもいいけどさ、冨岡さんにここまで付き合ってやれるのなんて私しかいないから、大事にした方がいいよ』

「もちろんだ。大事にする」

私は半分冗談、半分本気だ。
冨岡さんは10割本気だろう。

『じゃ、帰るね。おやすみ』

「おやすみ」

ぶどうの入ったタッパーを抱え、ドアを開ける。
開けた夜空が目に飛び込んでくる。

『今日は星がよく見えるねえ』

「あぁ。いい天気だ」

肌寒くなってきた。

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