十七.昔々 ページ18
『A、それやめろ』
「それって？」
こくっと首を傾げるAは当時五つになったばかりだった。
ガキのくせに、何かと大人ぶってものを教えようとしてきたり
俺のことを弟か何かのように思っている節があったみたいだ。
『蛍くんって呼ぶの。格好悪いだろ』
「格好悪くないよ」
小さい頃はなんとも思わなかった名前だが、
蛍という名前はどうも可愛らしすぎるというか
気に入らなくなってきたのだ。
「あ、蛍って知らないの？
虫の名前なんだよ。見たことない？」
『あるっつうの』
あの小さな光る虫が由来というのも嬉しくない。
「私ねぇ、たくさん飛んでるとこ見たことあるよ！」
話が脱線しかかっていることにも気づいていない。
ただ、その景色を教えようとしてくる。
「河原でね。遠くの方に光がたくさんあって…
お星様がそのまま落ちてきたみたいで」
『遠く？』
「うん、遠く」
近くで見たことはないのだろうか。
その光の中に入って行きはしなかったのか。
そう問えば、Aは目を輝かせた。
「見てみたい！」
子供ながらの行動力というか、
俺はその日のうちにAを引っ張って河原まで来ていた。
夕日は地平線に吸い取られていた。
「こんなところまで来て大丈夫？」
『大丈夫だよ。ちゃんと帰してやるから』
当てもなく言い張った。
どこか大人びたAに、俺の方が凄いんだと教えてやりたかったのかもしれない。
結論から言うと、蛍は見ることができたのだ。
一つずつ灯り、辺りを取り囲みながら舞う光に
Aも、初めて見るものではないはずの俺もいたく感動して、そこいらを駆け回った。
「…蛍くん」
震えたAの声で我に帰った。
随分長い間ここに居たことだろう。
見渡せば、真っ暗な河原がどこまでも永遠に続いているようだった。
子供ならばよくあることだ。
『なんだよ、帰れるからな。ほら、あっちだよ』
すっかり道なんて分からなくなっていたが
適当な方向を指差して歩き出した。
今思えば見当違いもいいところだっただろう。
「蛍くん、違うと思う。だってこんな景色見たことないよ」
Aは蛍くん蛍くんと、泣きそうな顔で縋ってくる。
俺も呼び方に構っていられるほど余裕はなかった。
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いのり(プロフ) - ｍさん» すごく返信遅くなってごめんなさい、、嬉しいコメントすぎて本気で返信が思い浮かびませんでした(笑) 楽しく読んでいただけて何よりです、本当にありがとうございます🥲 (8月7日 21時) (
レス) id: 69f69473fe (このIDを非表示/違反報告)
ｍ - 既に完結されていますが、コメント失礼します。全てが綺麗でおもしろく、特に最後の終わり方には綺麗すぎて驚かされました。鋼鐵塚蛍の性格や行動等も解釈一致でしかなく、本当に尊敬します。この作品を完結させ、残していただきありがとうございます。 (6月24日 0時) (レス) @page48 id: a2c68b10b4 (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - 日華さん» ありがとうございます！ 鋼鐵塚さんほんとにイケメンですよね！！アニメも最高でした💞同士さんに出会えてその上作品楽しんでくれてとても嬉しいです(⸝⸝o̴̶̷᷄ o̴̶̷̥᷅⸝⸝) (6月15日 23時) (レス) @page47 id: 69f69473fe (このIDを非表示/違反報告)
日華 - わ〜！漫画で、鋼鐵塚さんイケメンだな〜って思っていたんですが、刀鍛冶のアニメを見たときにめちゃめちゃイケメンで推しになって、作品をあさっていたらこんなに素晴らしい作品に出会えました！！本当に面白かったです。連載お疲れ様です！ (6月1日 17時) (レス) @page47 id: 8b9dea8203 (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - あまねさん» 私も終わっちゃって少し寂しいです(笑)長い間応援ありがとうございました！ (2022年2月1日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
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