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それを察したのか、クスッと笑った彼女。
「……呼び方、気になった?」
「ううん、そういう訳じゃないの。上杉くんの名前って、普段あまり聞かないから」
「そっか……あのね」
そう言って話してくれたのは、Aちゃんと上杉くんのお互いの呼び方の話。
小学校の途中から、学校や人前では名字で呼びあうようになったこと。
それでも、信用してる人、特定の友達や親の前では、名前で呼びあっていたことも。
「彩ちゃんと美門くんに秀明で初めて会った日に、和典に聞いたの。あの二人の前で名前で呼んでいいかってね。そしたら、すぐに了承してくれたんだ」
Aちゃんは、嬉しそうに言った。
「それって、和典が二人のこと、信頼してる証拠だよ。素直じゃないから、普段はそんなこと言わないだろうけどね」
その言葉で、すごく心が温かくなった。
信頼、してくれてるんだ……。
「和典が女子を認めるなんて、珍しいことだよ」
上杉くんの女嫌いは、私もよくわかっているつもり。
でも、幼なじみのAちゃんが言うことだから、本当のことなんだな、と思えて嬉しかった。
「あ、もちろん私は昔から一緒にいただけだから、認められたわけでもなんでもないんだけどね」
「それは違うよ」
私がそう言うと、Aちゃんは少し驚いたようにこちらを見つめた。
「Aちゃん、すごい努力家だもの。まだ付き合いは短い私でも、それが伝わってくるよ」
私は言葉を選びながら続けた。
「上杉くんは、女子が嫌いっていうより、周りに流されて自分で行動しない人が嫌なんじゃないかな。Aちゃんは、自分をしっかり持ってるもの。だから上杉くんも、心を許してるんだよ。そんなに謙遜しなくていいと思うの」
私の言葉を聞いて、彼女は微笑んでくれた。
……上手く伝わったかな。
「彩ちゃんは優しいね。そうやって他人の良さを褒められる彩ちゃんだから、和典も一緒にいられるんだなぁ」
Aちゃんの言葉は温かくて、私にとってすごく嬉しかった。
Aちゃんと話すたびに、その温かさや優しさに触れられている気がする。
「お姫様たち」
そんな私たちに声をかけたのは、少し前を走っていた黒木くん。
「仲良くしてるみたいで何よりだ。でも、もう着くからね」
前にはもう、広場が見えてきていた。
作者のひとりごと(随時更新)
春編お付き合いありがとうございました!夏編は私が書きたかったお話てんこ盛りなので、なかなかまとまらずに苦戦中です……。気長にお待ちいただければ有り難く思います。それでは続編でお会いしましょう!
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奈都(プロフ) - 涼宮美桜さん» コメントありがとうございます!そう言って頂けるとやる気が出ます。師走の忙しい時期ですが、とにかく公開だけはしようと思っているのでお待ちください。 (2018年12月9日 21時) (レス) id: 98247bbc9a (このIDを非表示/違反報告)
涼宮美桜 - 12月15日、絶対に夏編見ます!楽しみです!これからも、頑張って下さいね! (2018年12月7日 16時) (レス) id: 73c1c90619 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 涼宮美桜さん» ありがとうございます!とても嬉しいです。夏編がなかなか書き進まず、公開は遅くなってしまいそうなのですが、必ず完成させるのでもうしばらくお待ちいただければ嬉しく思います。 (2018年11月6日 22時) (レス) id: 98247bbc9a (このIDを非表示/違反報告)
涼宮美桜 - とっても面白かったです!夏編も楽しみにしてます!! (2018年11月5日 16時) (レス) id: 73c1c90619 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 志恵さん» コメントありがとうございます!春編まではとりあえず早めに更新できそうなので、頑張って進めたいと思っています。これからも読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。 (2018年9月30日 10時) (レス) id: 98247bbc9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2018年8月10日 9時