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はじめは笑顔だったAちゃん、でも途中からなぜか真剣な表情に変わったの。
それから、バッグの中から手帳を取り出してスケジュールを確認する素振りを見せた。
離れていたから会話の内容はそんなに聞こえなかったけど、何かあったのかな。
その後、2、3分ほど話してからまたあいさつをして電話を切り、席に戻ってきたの。
「食事中にごめんね」
「それはいいけど、何かあったの?」
「……ううん、大丈夫。なんでもないよ」
あ、また大丈夫って……。
その言葉が気になったけれど、Aちゃんはいつもどおり明るい表情に戻っていたから、深掘りはしないでそのまま食事を続けたんだ。
その後は、雑貨屋さんや洋服屋さんなど、目に留まったお店を次々にまわりながら楽しんだ。
本屋さんでは、私が好きな作家の本を見つけてそれについて話したり、Aちゃんにわかりやすい英語の参考書を選んでもらったりしたの。
「好きな本って言えば……上杉くんが、ハッピープリンスの話が好きって言ってたよ」
「ハッピープリンスって……像の王子とツバメのお話だよね?たしか、和典の家に唯一あった絵本がそれだった気がする」
そうなんだ……。
上杉くん、絵本とかファンタジーとは無縁そうなイメージはあるものね。
「Aちゃんは好きな本あるの?」
「たくさんあるけど……絵本でいうなら、シェル・シルヴァスタインっていう、アメリカの作家が描いた作品が好きかな。『おおきな木』って絵本なんだけど、知ってる?」
「あ、知ってる!小さい頃に読んだなぁ」
「実は私、最近その本を知ったの。アメリカにいた間に、一緒のプロジェクトに参加した子が教えてくれたんだ。お母さんが早くに亡くなっちゃった子なんだけどね。『おおきな木』って、母親と子供の関係を映し出すっていう解釈が多いでしょ」
「そうだね。その子は自分を少年に重ねて、木がもってる少年への愛情に惹かれたのかな」
「たぶんそうだと思う。さすがだね彩ちゃん」
Aちゃんは文系だし語学知識の幅が広いから、本の話をしていてすごく楽しかった!
それからはまたお店をぶらぶらして、夕方の電車に乗って帰ったんだ。
「急だったのに付き合ってくれてありがとね」
「こちらこそ、楽しかったよ」
今日1日の充実感と、旅行への期待を膨らませながらAちゃんと別れたの。
まさか、kzの旅行であんなことが起きるなんて、このときは考えてもみなかったんだ。
作者のひとりごと(随時更新)
春編書いて今は夏編に突入したところですが、私の高すぎる目標ではこの後も秋編、冬編と続きます。そして短編集を書く!みたいな野望ももっているのですが、いったい全部書き終わるのは何年後になるんでしょうか……。
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椿姫 - 夢主が出てきて物凄く面白いです。夏編、秋編、冬編を楽しみにしております。 (2022年4月4日 13時) (レス) @page20 id: 910387af12 (このIDを非表示/違反報告)
モモ(プロフ) - はじめまして。こんばんは!夏編の続きも秋編、冬編もとても楽しみです!更新これからも気長に待っています。応援しています! (2021年6月10日 19時) (レス) id: a95e8dfc3d (このIDを非表示/違反報告)
月(プロフ) - kzの夢小説ってアーヤが主人公の話が多いので、読んでみると凄く面白いです!!更新楽しみにしてます! (2020年9月27日 12時) (レス) id: 72ed035e10 (このIDを非表示/違反報告)
りーいか - 続きがすげぇ楽しみです!これからも頑張ってください! (2020年8月19日 0時) (レス) id: 3ec86cf350 (このIDを非表示/違反報告)
ヒヨコ(プロフ) - 更新楽しみにしてます!頑張って下さい! (2020年6月27日 8時) (レス) id: a71ea1e4cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2018年12月14日 16時