31．あなたの傷を私は癒せない ページ31
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「……ね、知ってる？大野さんとA先輩の結婚無くなったらしいよ」
「うそ！なんで？」
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結婚する、と決まった時あっという間に話が広がったみたいに
結婚が無くなった、と決まったらあっという間に社内はその話で持ちきりになった。
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智の周りには沢山の女の子達。なんで結婚をやめたのかって、問い詰められてる
パソコンに資料を打ち込んで、なるべくそんな話に気を取られないようにしてたけど
どうしても泣きたくなって、辛くなって、苦しくなって
私は立ち上がってトイレに駆け込んだ。
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私が智と一緒にいると、智を一生苦しめることになる。
きっと智は、「もし私が櫻井さんと一緒になっていたら」と死ぬまで自分に問い続ける
私と一緒にいるべき人は、俺じゃなかったんじゃないか
あの時、こうしておけばよかった
あの時、こう言っていれば
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智が心に背負った傷を、私は癒せる自信が無かった。
もっと言えば、私の顔を見る度智は自分を責めるかもしれない。
………。私、知ってるよ。
智が、自分の幸せより私の幸せを願ってくれていることくらい。
付き合う前だって、付き合ってる時だって、今でもずっと。きっとそう。
A「………うぅ…っ、………、」
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涙でメイクぐちゃぐちゃだよ。って、トイレの鏡にうつる自分に言おうと思った時、
携帯が鳴って、私は「はい」と掠れた声で答えた
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翔「もしもし？櫻井だけど、今大丈夫？」
A「………っ、」
翔「……あれ？もしもし？」
A「……だ、いじょぅ、っ」
翔「……なんで泣いてるの」
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もうだめだ。そう思った。
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止まることを知らない涙は、私の意思なんか無視してどんどん溢れ出して
電話で繋がってるというのに、「…うぅ……」と声を漏らして泣く。
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電話越しの櫻井さんは黙ったままで、私は「ごめんなさい」とやっと口にして切ろうと電話を少し耳から離した。
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翔「A」
櫻井さんが、私の名前を呼んだ
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32．やっぱりずるいよ。→←30．「ごめんね」じゃなくて「ありがとう」
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作者名：向日葵
| 作成日時：2016年4月11日 20時
