30．「ごめんね」じゃなくて「ありがとう」 ページ30
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窓から朝日が差し込む。
その光の温もりが心地よくて、私は体を起こしてカーテンを開いた。
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全身が打たれるような、圧倒される光に泣きそうになって
そこら中に転がっている嫌なこと、辛いことが全部
今すぐ消えちゃったらいいのに、なんて。
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そんな、柄じゃないことも思ったりして。
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昨日の夜。
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私達は身体を重ねた。
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「さよなら」とか「好きだよ」とか
そんな言葉は一言も口にせず
ただ、
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「ありがとう」
お互いに、その言葉だけを胸に秘めて、沢山泣いて、沢山キスをして、沢山、愛し合った
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スヤスヤと寝息を立てる智の頬をそっと撫でる。
長い睫毛。綺麗な肌。私を沢山愛してくれた唇。私を沢山勇気づけてくれた彼。
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A「…………っ」
大好きだった。あなたの存在に何度も救われた。
あなたがいたから頑張れた。
あなたがいたから、私は愛を沢山もらえた。
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そんな智を見つめていると、
リビングのテーブルの上に置いてある携帯がバイブを鳴らした。
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「今まで言ってなくてごめんね。」
お母さんからのLINEだった。
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「智に全部聞いたよ」
たったこれだけのメッセージを打つのに、信じられないくらい何分もかかった。
何のこと？って、とぼけたメッセージが返ってくるんじゃないかって、
心のどこかで期待していたけど。
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……やっぱり嘘なんかじゃなかった
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作者名：向日葵
| 作成日時：2016年4月11日 20時
