涙なら＿ko ページ8
『……っ…う…』
友だちと軽い喧嘩をした、ただそれだけだった。
それだけだったのだけれど、まだ心の幼い私にはそこはかとなく悲しくて。
私は、私以外は誰もいないオフィスで静かに泣いていた。
「A、どうかした？」
ガチャッと開いたドアの方からこうちゃんの声が聞こえる。
顔を見られたくなくて私は膝に顔を埋める。
『……何でも、ない』
「何でもなくないでしょ。聞き出そうとはしないからさ…話して楽になるなら、俺に話してみて？」
至極優しい声で、それでも落ち着いた声で、私に話し掛けてくれる。
こうちゃんはソファでうずくまる私の隣にそっと寄り添う。
『あのっ、ね…？』
その声と体温に絆されて、よりいっそう涙が溢れ出す。
「うん」
『…友だち、と…喧嘩しちゃって……些細なことで』
「…うん」
『謝れ…なくて……ね』
こうちゃん私の話を相槌を打ちながら聞いてくれる。
「俺もね、謝れなくて凄く後悔したことあるんだけどさ。次会ったときに怖がらずに謝れば、結構仲直りできるもんだよ」
俺の話で良かったかな、なんて続けるこうちゃんに、私はクスッと笑みを浮かべる。
『ありがとう……楽になったし、参考になった』
「ほんと？…良かった、笑ってくれたし」
こうちゃんはさっきの優しい雰囲気のまま、私を元気付けるように明るく話しかけてくれる。
いつもより大人っぽく振る舞うこうちゃんに少しだけイタズラしたくなって。
『ねえ、こうちゃん』
「ん、どうした？」
『こんな優しくされたら好きになっちゃうかも？』
私がニコッと笑いながら言えば、こうちゃんははっ、と目を戸惑わせながら漏らす。
『ふふ、冗談。でも、ありがとうね。今度何か奢るよ』
「…好きになってくれないの？」
こうちゃんと目が合い、逸らせなくなる。
『あ、いや……なる、かもしれない……けど』
「そう、じゃあ落としにいくから、Aのこと」
なぜだかすんなり言われてしまい、戸惑う。
けれど、こうちゃんと、と考えてみて悪くないななんて思う。
『うん、待ってる』
いや、もうオチたかもしれないけどね。
ラッキーカラー
あずきいろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 690人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
R - 初めまして！読まさせて頂きました。リクエストをしても良いですか？もし良いのであれば夢主が失恋して砂川さんに相談したら付き合うみたいな感じです（？）よろしくお願いいたします！ (2021年10月9日 7時) (
レス) id: 25d77a33b7 (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - [作者の独り言]おおよそ一年ぶりの更新です。長く間が空いてしまいましたが、少しずつ更新していくかもしれません。 (2020年7月19日 15時) (レス) id: 6a4f573938 (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - [作者の独り言]ただ好きと隙はイントネーション同じだけど鋤は違うのが難点ですね。 (2019年7月2日 22時) (レス) id: 9b47b20b96 (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - 更新まで間が開き、大変申し訳ございません！ (2019年6月29日 8時) (レス) id: 9b47b20b96 (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - 月乃さん» リクエストありがとうございます！大人っぽいこうちゃんのお話ですね。書かせていただきます！ (2019年4月17日 7時) (レス) id: 9b47b20b96 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼衣瑠璃 | 作成日時：2019年2月11日 8時
