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いつの間に眠ってしまったのだろう。



顔を上げると
肩から毛布がするっと落ちた。


「たか?」



寝てるはずのたかがいない。


「え…?」


慌てて寝室を飛び出ると。


シャワーを浴びたのか、
濡れた髪でキッチンで水を飲んでいるたかがいた。


「たか?」


名前を呼ぶと
お、は、よ、
と口を動かした。




「喉…辛い?」



西「少しね。で、なんで毛布?」



くすりと笑って
少し掠れた声で聞かれる。




「え?あ…。」



私は知らずに肩にかけてあった毛布を握っていた。



西「ごめんな、
ベッドに寝かしてあげたかったんだけど…。」


「そんなの、いい!それより、熱は?」


西「うん、下がったと思う。
すげー寝たよな、俺。」




穏やかな笑みとともに返事をくれるから
なんだかほっとして急に体から力が抜ける。



「よかった…。」



ふらふらとソファに座り込んで



「よかった。」



もう一度、
そう口に出したのと同時に頬を伝う涙。



西「Aのおかげ。ありがとな。」



そんなこと、ない。
私は何もできてない。


ゆっくりこちらに歩み寄るたかが
私の隣に座った。


「熱も、怪我も、腰が痛いのも、
代われたらいいのにって。

何もできなくて。
そばにいるしかできなくて。」



毛布に顔を埋めて
思いのまま言葉を紡ぐ私の背に
当てられたたかの左手。



そのままその手で
頭を引き寄せられて
たかとの距離が近くなる。




西「それ…。



俺も、いつも思ってたよ。」




「え?」




西「Aが階段から落ちた時も熱を出した時も。

何日も意識が戻らない時とか、
フラッシュバックに苦しんでる時。

Aの辛さとか痛みを分けてもらえたらとか、
代わりたい、代わってやりたい、とか、
できもしないこと思ってた。」



「そっか。…ごめんね。」



止まらない涙が毛布に染み込んでいく。


ごめんね、なんかいらないって言って
よしよし、と髪をなでてくれる手も
触れるところから伝わる体温も
まだ少し熱い。
なんか、怖い。



たかの身体に腕を回してぎゅっとしがみつく。



西「なーによ。珍しく甘えたがり?」



うん、と頷く。
なぜか無性に触れていたい。



「たか、まだ熱、あるね。
もう少し寝たほうがいいよ。」


西「じゃ、一緒に寝よ。」



「ぎゅってしてくれる?」



西「もちろん。」

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作品ジャンル:恋愛
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リリィ(プロフ) - fukaさん» 出逢えてよかったって言ってもらえてとても嬉しいです。書いてよかったです!ありがとうございますー★ (2020年4月12日 15時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
fuka(プロフ) - 完結お疲れ様でした! 前作から読ませていただき、何度も涙がこぼれました。切なさや悲しさ、喜びなど、たくさん感動したりして、すごく素敵なストーリーだったなと思います! 終わってしまって寂しいですが、この物語に出逢えてよかったです! (2020年4月5日 22時) (レス) id: 0f2ddad342 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - Yuiさん» ありがとうございます☆頑張ります! (2020年3月31日 10時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - ゆにしぃさん» コメントありがとうございます!また読見に来ていただけるようにますますがんばります! (2020年3月31日 10時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
ゆにしぃ - 長編お疲れ様でした!このstoryは本当に大好きです!!(side story楽しみにしてます!) (2020年3月29日 12時) (レス) id: 2657bef5db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リリィ | 作成日時:2019年12月1日 8時

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