歩む道。7

349 side Nissy ページ49

ドームの準備にむけて
慌ただしく毎日が過ぎて行くなか
季節は春に移り変わる。


移動の車から満開の桜が
ライトアップされているのが見えた。


西「桜、かぁ。」



と呟く俺に
最近新しくついたマネージャーが言う。




マ「俺も花見なんてしばらくしてないですね。」




最近グループ全体の
マネージャーの数が増えて、
交代で俺たちについてくれる。


マネージャーさんが
休みを取りやすい体制を作れたら。


と最初に提案したのは
あの朱里だったという。



道を踏み外すことが無ければ
いい人材だったんだろう。




俺の隣にいたかった。
俺のマネージャーになりたかった。


そう言って、
Aを傷つけたあいつを許すことは
この先絶対にない。



あいつのせいで、
Aは心に消えない傷を負ってしまった。



でも、数日前。



事務所宛てに届いたチーフ宛ての
郵便のなかに入っていたという指輪を
手の平に乗せて見つめる。


それは、あの時、
あいつがAから奪ったもの。
Aがいつも首から下げていたあの指輪。



なぜ今更？



指輪と一緒に入っていたのは
短いメッセージ。




【返すタイミングを逃していたものです。
彼と彼女の幸せを願います。】




あの時、謝らないと言っていた通り
あいつからAに対しての謝罪はない。




そして、Aはあいつに対する文句も愚痴も
言わなかった。


許せない気持ちも
やりきれない気持ちも
全部飲み込んで前を向くことだけに
一生懸命だったA。




あいつのこの言葉を見たら
Aはどう思うだろうか。
今更この指輪が手元に戻ることを
喜ぶだろうか。



西「わからないなぁ…。」



ふと口に出たその言葉に
不思議そうにしたマネージャーに
曖昧な笑顔で返して
俺は車の揺れに身を任せ目を閉じた。





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





いよいよドームまであと3日。
山のようにある仕事に体も悲鳴を上げる。



クタクタな体を引きずるように
部屋に戻った俺。



あれ、電気。
消し忘れたかな。
そんなことを思っていると…。



「たか、お帰りなさい。」



まるでスローモーションのようだった。


リビングのドアが開いて、
愛しい人の姿が見えて、
ふわりと笑う。



驚きすぎると声がでないんだな、
なんて頭のどこかで考える。




西「A…？」


「来ちゃった。」


笑顔を浮かべるAが
そこにいた。

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