歩む道。3

143 side Nissy ページ43

西「腫れてる。」


まぶたにそっと触れる。



西「そんな顔もかわいいけどね。」


「もうっ！」


ちょっとだけ、笑ってくれたA。




「お風呂入って、早めに休みな。

準備してくる。」



そう言って立ち上がった、
俺の手をぎゅっとひっぱるA。




西「どうした？」



俯いてるAに問いかける。



「…ワガママ…。」



西「え？」



「ワガママ言ってもいい？」



西「うん。」




「あのね…。一人で寝るのやだ。」



小さい声で、そう言うA。



西「だから、そう言うのはワガママって言わな…」




「抱いて、ほしいの…。」



俺の言葉が終わるより前に、
Aから発せられた言葉。


一瞬耳を疑うその言葉。




西「は？」


Aからそんなこと言われたの
初めてじゃないかと思う。



自分で言っったくせに
真っ赤な顔で俺を見上げるA。



「疲れてるの、わかってる…。

これからまだ仕事したいのも、
もちろん、わかってるけど。


西島さん…じゃなくて
たかに触れたい。


心も体も、
たかでいっぱいにして、
他のこと何も考えられなくしてほしい。」


福井の前のあの夜から、
Aを抱いていなかった。


忙しかったのもあるけど、
触れるのが少しだけ、何となく、
怖かったのもある。


あの時あんな抱き方をして、
そのあとは、実彩子とのことを見られていた驚き、ついでに今回のストーカーまがいの出来事。


Aに負担をかけたくない思い。




西「…体は、大丈夫なの？」



過呼吸を起こしかけたばかりなのに、
そんなことしても大丈夫なのか？



「うん…。」



俺はソファに座るAの前に
膝をついた。


耳まで真っ赤なAの頬に
片方の手をそっと、添わせる。


ピクッと揺れる肩。



西「ほんとに平気？」



もう片方の手で、
Aの手を握る。



「たかのほうが、疲れてるし…

平気じゃない…と思うし…。


でもっ、でも…。
わかってるんだけど…
ワガママ…だけど。


私…。」



必死で言葉を紡ぐその姿が愛しすぎて
腫れたまぶたにキスを落とす。


「…っ！」



西「ほんとに、もう…。

なんで？



かわいすぎるんだけど。」


はぁ、とわかりやすいため息をついて見せる。


その俺の態度に、
不安げに瞳を揺らすA。



西「体、辛かったら言えよ？」


そう言った後、
返事も聞かずにAにキスをした。

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