19 ページ19
.
バイト、また変えた方がいいのかな。
それはあからさま過ぎる？
でも、先輩だって
私が気まずい思いしてることくらいは、分かってくれてるはず。
「…」
先輩は何も言わないから。
何も言ってくれないから だから私は、いつまでもこんな…
『走るの速いね』
背後からの声にビクッとした。
何の気配も感じなかったのに。
おそるおそる振り向く。
「………どう、して…」
「どうしてって、急にいなくなったら びっくりするよ？」
「…す、みません、…でも 私」
表情も、あまり大きくない声もいつもと変わらない。
なのにどうして私のカラダはこんなに震えてるのだろう？
「遅いから送ってくよ」
私に向かって伸びてきた手にビクついて、その手を遮った。
「…1人で、大丈夫ですから」
後ずさったら、後ずさった分だけ距離を詰められる。
どうしたらいいのか分からなくて。
震えが止まらなくて。
「遠慮しないでいいよ」
「…遠慮、なんて…きゃ、」
腕を掴まれ一瞬で鳥肌が立つ。
「さ、帰ろ」
「は、放してくださいッ、」
強く握られてる腕
引いてもビクともしない
「放したら逃げるでしょ？」
「…」
怒ってるのか笑ってるのか、街灯の明かりは遠すぎて表情が読めない。
そんなことが恐怖を倍増させて、カラダがガクガクと震える。
逃げたい、でも逃げられない。
「ほら行くよ」
半ば強引に方向転換させられる。でも駅と逆の方向…
「…あの、こっちじゃ、」
喉の奥が震えてうまく声にならない。
この人は何を考えてるの？
コワイ。
細身なのに驚くほど力が強い。
柔和な表情からは想像もつかないほどにオトコの人だったんだ、と初めて気づく。
1歩2歩と引っ張られるように導かれるカラダ
行きたくない方向に動く自分の足がうらめしい。
「どうして急にいなくなったの？」
「…ぁ、あの…、」
「ダメでしょ、そんなの」
握られた腕にぎゅっと力が入る。
「…いたっ、」
「…」
「痛いです…っ、」
「…」
「手 離してください…！」
「…」
視線はまっすぐ前を見ていて
私の声なんか聞こえないかのよう
わずかな抵抗で腕を振ろうとしても
それ以上の力で握りつけられて
何もできず痛みだけが強まる
どうして？
どうして？
そんな疑問が頭の中でグルグル回ってるのに言葉にならない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 592人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yuihibiki(プロフ) - ちょこたろーさん» 人それぞれですよね。さまざまな出来事に対しての感じ方も受け取り方も、私の書いたあいさつ文に当てはめる情景も。このオハナシがどんなリハビリになってるのかは分かりませんが、完結までもう少しお付き合いくださいませ。 (2019年11月17日 21時) (
レス) id: ecfd2b01ee (このIDを非表示/違反報告)
ちょこたろー(プロフ) - いつも読ませてもらってます。挨拶にある今の気持ちが、うなずけすぎて思わずコメントさせてもらいます。飲み込めていないことが多すぎてやっぱり正月から止まってる。流れはね頭で受け入れているんだけど心はねもう容量オーバーで。だからこのお話が私のリハビリです。 (2019年11月14日 15時) (レス) id: c8a1445fc4 (このIDを非表示/違反報告)
yuihibiki(プロフ) - さわさん» この大野先輩は主人公ちゃんにとってなかなかキツイよなあーって思いながら書いてますけど、しばらく？ずっと？こんな感じでいくことになりそうです(^_^;) (2019年11月10日 9時) (レス) id: ecfd2b01ee (このIDを非表示/違反報告)
さわ(プロフ) - きっとニヤニヤしてしまう展開が待ってるんだろうけど、主人公ちゃんの心が苦しそうで悲しくなります。大野先輩お願いしますよ〜。 (2019年11月9日 16時) (レス) id: 759a393a86 (このIDを非表示/違反報告)
yuihibiki(プロフ) - nyurika513さん» ありがとうございます（笑） (2019年11月2日 0時) (レス) id: ecfd2b01ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yuihibiki
| 作成日時：2019年9月23日 0時
