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お人好しだと自分でも思うよ?
けど、私がこの夏あの場所に来た意味って
なんだろう、って考えたら
これしか思い付かなかったんだよ。




渉が、藤ヶ谷さんに引き合わせた理由。

みんなが応援してくれる理由。




きっと、全てはみんなが
藤ヶ谷さんを大切におもってるからで。



ふたりを引き合わせるのは違う、って
思ってる人がいたって、
私はこれがいいと思う。









この夏を一緒に過ごしてきた私の役割。





少し弱くて、寂しがりやな
藤ヶ谷さんの背中を押す。









「本当に、このままでいいんですか?」









視線が重なる。









「…………行きましょう、」







何も言わない藤ヶ谷さんの、
手を握って、強引に引っ張っていく。









ロビーに出れば 行き交う人たち。

きっと、この中に百合さんはまだいる。

………藤ヶ谷さんのためにもいて欲しい。







時計を見れば、刻々と出発は近づいていて。







「はやくしないと、行っちゃう………っ、」








私の心も焦り出す。


藤ヶ谷さんと百合さんを会わせなきゃ、って。









「藤ヶ谷さん、急いでっ…………、」







その言葉に、段々と藤ヶ谷さんの
歩くペースが速くなっていくのが分かって。





気がつけば、
どちらからともなくロビーを走り出していた。





大きな発着案内板、





「16ゲートだから奥ですっ、」





藤ヶ谷さんを見上げれば、
その瞳は、もう百合さんを探してた。






だから、






立ち止まって、その手を離した。









「Aちゃん…………?」



「早く行ってあげて下さい、」



「え?でも、







「ちゃんと、気持ち伝えてください」









“待ってます、”









その声は聞こえていたかは分からないけど、
藤ヶ谷さんは人混みの中へと消えていった。









夜、
エンジンの音が聞こえて、
玄関を飛び出した。







「…………………ただいま、」



「……………………っ、」






“おかえりなさい、”






そう言いたいのに、
勢いで飛び込んだ藤ヶ谷さんの胸に、
ぎゅ、っと抱きしめられる体温に、
心がもっていかれて、声にならなくて。







「帰ってこないと思った…………………、」






本当は不安で、怖くて…………
押し潰されそうだった。









「Aちゃんがいるから帰ってきたよ」









そう言われて、
子供みたいに泣く私を
藤ヶ谷さんはずっと抱きしめてくれた。

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ちい★(プロフ) - さみしいって言ってたよ…と嘘か本当かわからないけど、言ってくれた裕太の優しさに気づいてしまいました…。でもやっぱ太輔いいねぇ…あやさん!みつも良き★ (2020年1月10日 2時) (レス) id: aba16733a8 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - みっかさん» こちらにコメントしてくださってたの見落としておりました!おかげで完結を迎えました。ぜひ最後までお付きあいくださると嬉しいです。 (2017年10月27日 21時) (レス) id: b34d9690f4 (このIDを非表示/違反報告)
みっか(プロフ) - あと2〜3回で 終わってしまうんですね…どっちに持ってかれるのか( ToT )ミツが街から出て行く!って流れには ちょっぴり驚きでした! (2017年10月21日 1時) (レス) id: 6df392b90f (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - ともさん» 遂に!もう私だったら部屋に入った瞬間失神しそう…、ミツなにしてるんですかね。主人公ちゃん気にしてますよ〜! (2017年10月9日 13時) (レス) id: b34d9690f4 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - たまぴよさん» ゆうたろうは考え事が多い主人公ちゃんの癒しになってもらってます!藤ヶ谷さん電気消して、部屋においでしてその先はどうしちゃうんでしょう…!移行後もよろしくお願いします。 (2017年10月9日 13時) (レス) id: b34d9690f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あや | 作成日時:2017年8月21日 23時

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