兄貴分 ページ6
我が家に帰っている途中、夏目が落ち着かない様子で彷徨いているのを見つけて声をかけた。
すると弾かれたようにこっちを向いて走りより、手を握ってくる。
「A!田沼から聞いたぞ!家にも帰ってなくて、凄い心配したんだからな…!!」
『えっと、いや、その、ごめん。』
田沼め……!!内緒にしてくれてたっていいじゃない!
なんて心の中で悪態をつきながらも、夏目に握られている手が熱くなり、それは徐々に上昇して頬にまで熱が集まった。
今が夕方で良かった。
そんな私と夏目を見て、翠蓮は肩を震わせ笑っている。
私が少しだけ睨めつけると、翠蓮は肩を竦めた。
「おお怖っ。Aは何するかわかんないからなぁ。」
『何もしないわよ。』
「して、これが夏目レイコの孫か…なんだ、随分ヒョロっちぃやつだな。」
『翠蓮には言われたくないと思うんだけど。』
そんな私と翠蓮の会話に、夏目が首を傾げた。
私は夏目の手を柔らかく解き、翠蓮を一度叩いてから紹介を始める。
『こいつは翠蓮。校門で立ってたのもこいつ。昔と姿が違ってたから、私もわからなかったの。心配かけてごめんね。
翠蓮は私の着物の新調に来たんだって。前の着物も、翠蓮が作ってくれたんだ。』
紹介をしている間も、「ほら手ぇ出した!」なんて騒ぐものだから、もう一度睨めつけそれを制す。
そんな私達を見て、今度は夏目が笑いだした。
「なんか、Aは翠蓮にはあたり強いんだな。」
『そうかな?まあ、昔は実の兄みたいな感じだったしね、こいつ。』
「今でも大切な妹分だけどな?」
『あらあら、それなら少しは黙ってくれない?お兄ちゃん。』
私はその言葉を言い終わらないうちにもう一度翠蓮を叩き、家に向けての残り数メートルの距離を進む。
夏目は笑いを堪えるのに必死そうだった。
「そうだ、夏目。お前にも何か作ってやろう。服でなくとも、カバンとかも作れるぞ?」
「それは悪いよ。作るのも時間かかるんだろう?」
『大丈夫よ夏目。こいつ作るのすごく早いから。』
「そうだぞ。人の子が遠慮なんかするな!」
そう言って翠蓮は、夏目の頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。
"人の子が遠慮なんかするな"
それは昔、私も言われたことがある。
本当に兄のように慕っていたあの頃、初めて物をくれた時にそう言ってきた。
優しくて大きな手で、私の頭を撫で回しながら。
あの頃と何も変わらない、大好きな兄貴分。
生きているうちに、会えてよかった。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年10月18日 11時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - この作品面白いです。更新頑張ってください!続き楽しみにしています。 (2019年9月27日 22時) (レス) id: fe959518f7 (このIDを非表示/違反報告)
蝶華 - 初めてこのお話を読みましたが凄く良いです!これからも頑張ってください!応援しています! (2019年9月2日 21時) (レス) id: 70b9e10207 (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 更新お疲れ様です!最近夏目友人帳にニャンコ先生関連ではまっていてこの作品もとても楽しませてもらっています!徹夜して読みましたww 体調に気をつけて頑張ってくださいっっ!! (2019年7月20日 15時) (レス) id: a81fa4594d (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - かなとさん» すみません、すぐに気づいて直してきました。ご指摘ありがとうございます! (2019年6月7日 22時) (レス) id: 4ffe17b14f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年6月7日 22時