最終日 ページ3
昨日の疲れもだいぶ癒えた朝、皆と一緒にご飯を食べてまた勉強を開始する。
蒼葉達は外でニャンコ先生と話していたり、たまに私の勉強を見に来たりなど、だいぶゆっくりできているみたいだ。
だが、一昨日の朝からほとんど勉強漬けで、西村の目はもう死んでいる。
「もうわっかんねーよー。穂ノ目ー、これ分かるかー?」
『その姿勢で言われてもねぇ…。』
机に突っ伏した状態で、西村が私に問う。
いや、どの問題が分からないのか教えてくれないと教えられないよ。
西村は怠そうに体を起こして、分からない部分をシャーペンの先で指した。
『ああ、これはね_』
そうして教えてあげれば、死んでいた顔は生き返り、笑顔で私にお礼を言うとまたプリントに向き直る。
切り替えが早くてびっくりしているが、スイッチが入ったのならいいことだろう。
それから順調に勉強を続けて、お昼ご飯になった時、先生から午後は掃除の時間までは自由時間だと伝えられた。
その時の西村の喜びようは半端じゃなかった。
「なあなあ!!自由時間なにする!?森ん中でも入るか!?」
「お!いいんじゃないか?せっかくこんな所まで来たんだしな。」
「でも、掃除の時間までそんなに時間ないから遠くまで行けないわよ?」
「行けるだけでいいんだよ。行けるだけで。」
そう楽しそうに話す西村達を見つめながらも、私は足の怪我のことを考えた。
昨日よりは痛みが引いたけど、まだ少しだけ痛む。まあ、無理にしなければいいか。
そう自己完結し、結局森の中に入ることにした。
夜に見た時とは違って、木の隙間から漏れる太陽の光が心地いい。
西村と北本は何故か追いかけっこを初めて、笹田が危ないと注意する。
こんな他愛もない時を過ごしたのは初めてだ。
遊んだのも、人と触れたのも、ここに来てからの何もかもが生まれて初めてのことだった。
この場所で知れたことに、感謝しかない。
涼子さんは、こういったことはできていたんだろうか。
『…夏目。』
「なんだ?」
『…楽しいね。』
「…ああ、そうだな。」
私の見つめる先には、私の大切な友人がいる。
今までそこには、名も知らない子がただ遊んでいる光景があった。
だけど、それはもう過去の話。
『西村ー!転ばないようにねー!』
「おーう!って、うわぁ!?」
「言われた傍から転んでんなよ西村!」
今は、大切な友人の姿がそこにある。
手や足の痛みを忘れるくらいに、今この時が幸せだ。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年10月18日 11時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - この作品面白いです。更新頑張ってください!続き楽しみにしています。 (2019年9月27日 22時) (レス) id: fe959518f7 (このIDを非表示/違反報告)
蝶華 - 初めてこのお話を読みましたが凄く良いです!これからも頑張ってください!応援しています! (2019年9月2日 21時) (レス) id: 70b9e10207 (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 更新お疲れ様です!最近夏目友人帳にニャンコ先生関連ではまっていてこの作品もとても楽しませてもらっています!徹夜して読みましたww 体調に気をつけて頑張ってくださいっっ!! (2019年7月20日 15時) (レス) id: a81fa4594d (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - かなとさん» すみません、すぐに気づいて直してきました。ご指摘ありがとうございます! (2019年6月7日 22時) (レス) id: 4ffe17b14f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年6月7日 22時