30.癒したい傷 ページ30
「入ってもいいか?」
「あ…はい!どうぞ!」
襖越しにAから返事があった。
うなされて起きてしまったのだろうか。
俺は静かに襖を開けて部屋に入る。
「先程、うめき声が聞こえてな。
心配になって様子を伺いにきた。大丈夫か?」
「ええ!?
うるさかったですよね。すみません…。」
少し乱れた呼吸と、
額から滴る汗が正常ではなかったことを示している。
「こちらのことは気にするな。
鬼に襲われて怖い思いもしただろう。
それに君は過去の記憶も失っている。
辛い時は頼って欲しい。」
「ありがとうございます…。
その言葉だけで充分幸せです。」
柔らかく微笑む彼女は
どこか消え入りそうで…
「もう二度と君を怖い目に合わせない!約束する!」
「ふふっ。頼もしいです!」
ああ、
こんな顔で
こんな声でも笑うのだな。
俺は胡蝶に頼まれていたことを思い出し、
つい、Aの背中を撫でてしまった。
すると、彼女はピクッと身体を跳ねらせるものだから
思わぬ反応に慌ててしまう。
「…すまない!
胡蝶にAの背中の薬を塗るようにと
頼まれていたことを思い出してな!」
俺の言葉にAは顔を真っ赤にする。
「いやいや、それは流石に申し訳ないので…
自分で塗ります!」
「そういうわけにいくまい!
流石に千寿郎に頼むのもよろしくないと思ってな!」
いくら俺より歳が下だからといっても、千寿郎も男だ。
むしろ思春期の子にお願いする方が酷だろう。
背中といえども、女性の裸だからな。
しばらくAも考え込んだようで、
迷いに迷って決心したのか
耳まで赤くしながら俺に告げた。
「それでは…お言葉に甘えてお願いします…」
「もちろんだ!
薬は湯浴みを終えてからにしよう!
その前に夕餉だ!!」
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狐姫(プロフ) - misakimiさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!様々な行動の裏の心情が少しずつ見えてくるかと思います!お楽しみくださいませ(*˙˘˙*) (2022年1月8日 13時) (レス) @page43 id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 煉獄さんの、自分の心の動きについていけてない純朴さたっぷりの初々しさよ。今日も素敵!一週間のご褒美戴きました! (2022年1月7日 22時) (レス) @page42 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 読んでいただけて嬉しいです!辛く悲しい気持ちがありつつも、彼女への愛は変わらないのです。彼の心情の変化を追いながら物語を楽しんでいただけたらと思います!いつもありがとうございます( ˊᵕˋ ) (2022年1月1日 16時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 大正時代の煉獄さんの心の動きが、はっきり分かりますね!今後、惚れていく訳ですから、読み返すと、更に煉獄さんの辛さが際立ってしまうのでしょうね。今から泣けそう。 (2021年12月31日 19時) (レス) @page34 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 前回コメントしてから時間無く、今日15話。うっわ〜、苦しい。煉獄さんの心情を慮ると、涙。愛を誓った人に知らない人扱いされる絶望感。怖いでしょうに、それでも前を向いて、進もうとするのですね。 (2021年12月31日 19時) (レス) @page15 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume
作成日時:2021年12月13日 19時