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ページ10

『本題なんだけど。多分もう京都にいる必要はなくなったから、記念に手紙を書きました。メールで聞いた方が早かったかな、とも思ったんだけど。凄く綺麗な和紙だったから、手紙書きたいなって。』





.





ああ、こうするしかない。
君はもういないんだと認めるしかない。

あの手紙の内容は、読まなくてもわかる。
それ程、何回も読んでいた。

あの時の便箋ではないけれど、それに似た綺麗な和紙の便箋にボールペン。


どんなに願っても、もう。




黒子テツヤ様



暑いですね、陽射しが眩しいです。
テツヤはきっとバニラシェイクばかり飲んでいるんでしょう?
それならきっと熱中症にはならないと思うけれど、虫歯にならないか心配です。



そこまで書いて、思いの外上出来だなぁと思った。
遠目から見ればまさしく彼女の字で、黄瀬君じゃないけれど完全無欠の模倣かもしれないと笑った。

さて、続きだけど。
彼女は、何を書くだろう。
どんなことを書くだろう。

彼女は聡い人だったから、もしかしたら気付いているのかもしれない。



テツヤは、私のことをあまりよく思い出せないみたいだけれど。
それで、いいんだよ。
何年も引き摺ってないで早く他の人と出会えばきっと、世界も広がります。


だから、早く忘れて。
私は、大丈夫だから。
私は、もう





「いないから」





意図せず呟けば、本当に彼女が書いた手紙なのではと思えてきた。
ああ酷い。どうしてこんなことを書かなければいけないんだろう。


彼女ならきっとこう言う。
私のことなんて早く忘れて
私は大丈夫だから
私はもう、いないから



こんなの残酷だ。
開いたままの目から落ちる滴は、瞬きをすれば一滴二滴と落ちてインクを滲ませる。

書き直しだ。
くしゃりと手紙を丸める。





「Aさん、」





久しぶりに口にした愛しい名前。
あの日から一度も呼ぶことが出来なかった名前。





テツヤもきっと、もう大丈夫でしょ
だから、早く認めて下さい





「…ああ」





私は、もう死んだのだから





「僕が、殺したんですね」





僕が、記憶の中の彼女を殺したのだ。

はちみつ、とろり * 黄瀬涼太→←*



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設定タグ:黒子のバスケ , 短編集   
作品ジャンル:アニメ
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はなはな - 初めてのコメント失礼します 素敵な小説でした!赤司くんのお話の題名の意味って何ですか? (2016年6月26日 21時) (レス) id: f96d7679a1 (このIDを非表示/違反報告)
綵架(プロフ) - あざす!!あざます!! 頑張るね(( ありがとうあいらぶさゆ((´艸`*)) (2015年10月12日 8時) (レス) id: a294735b06 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - 綵架さん» 第2弾作って欲しいけど無理しないでください!! これからも応援してます! (2015年10月12日 0時) (レス) id: b1103d098f (このIDを非表示/違反報告)
綵架(プロフ) - さゆさん» ありがと!! みゃーじそん入りましたぁー← …というか、まず第二弾を出せるかどうかが謎なんだけど、できるだけ頑張るね(( (2015年10月11日 23時) (レス) id: a294735b06 (このIDを非表示/違反報告)
綵架(プロフ) - 陽鞠、@秋桜さん» ありがとうございます!! いやいやいや、私なんてまだまだです… 励みになるお言葉、ありがとうございますm(*_ _)m 笠松さん!!…書けるかわかりませんが、精進します…(( (2015年10月11日 23時) (レス) id: a294735b06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綵架 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ayakamakar1/  
作成日時:2015年8月11日 10時

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