絵 空 事 【限定短編集】

＊ ページ12

おとぎ話のお姫様にでも、なったつもり？



ずっと昔、誰かに言われた事があった。
それが誰かなんて、覚えていないけど
友達か、元彼か。



純粋無垢だった頃はいつの日だろう。

いつかきっと、私だけの王子様が来てくれて
私だけに愛を囁いて
永遠の愛をくれるのだと、信じて疑わなかった。


そんなドラマみたいな。恋愛小説みたいな。
素敵なお話なんて、ある訳がないのにね。



くだらない愛なら貰ってあげる。
私の事が好きだと笑う人は嫌いじゃない。
身体ならあげる、でも私の愛はあげない。

大人ぶって、達観して。
それでも。


いつの日かの夢を、守り続けたかった。
愛なら、ただ一人だけに、あげたかった。






「A、今日合コン行こうよー」


「あーごめん無理。今日、バイト」


「えー、なんか最近それ多くない？」


「しょうがないじゃん、大学生だからってシフト増やされるんだもん」


「えー…じゃ、次は来てね」


「ん、できたらね」






つまらない毎日。
同じ事の繰り返し。
高校生の頃なんて、あんなに大学生に憧れてたのにね。


伸ばした爪を見つめて、何色に塗ろうかな
なんてふと思った。
赤、青。可愛いよね。
パステルカラーも良いけれど。


黄色だけは、付けないと決めていた。
絶対に。






ごめんね、バイトなんて嘘。
でもね、合コンなんかに行けないのは本当だよ。

明日以降、誘ってくれるのなら
喜んで行くわ


その頃にはきっと、もう私の王子様はいないから。

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