絵 空 事 【限定短編集】

＊ ページ2

私は、他の人とは違う。
他の人にはあって、私にはないものって？




一言で言えば、人間としてあるべきものがない。
欠陥品だ。


一体、私には何が足りないんだろう。
そうとぼけてみて、軽く噴き出した。
あぁ、我ながら面白い。
そんなもの、もう何年も前からわかっていた。



つまらない人生だったと思う。
思春期の、よくある葛藤とかじゃなくて。
二十何年しか生きていないくせに、と言われるだろうか。それでも、たった四分の一生きただけでそう思ってしまう程の人生だったんだなと思ってくれるのならそれでいい。


一度だけ、遺書を書いた事があった。
ううん、遺書という程のものではなく、自分に宛てた手紙と言えばいいだろうか。

死ぬつもりはなかった。
くだらないことで、どうして自分が死ななくてはいけないのだと思っていたし、何より悔しいからだ。
強くならなければいけない。


学校で、国語の時間に書く作文。
それと全く同じものを買って、お気に入りのボールペンで書いた約三枚の人生。


楽しかった？悲しかった？辛かった？苦しかった？
そこには感情があった筈なのに、書き終わったそれを読んだ時には何も感じなかった。
そう言われて、何を感じた？それをされて、何と返した？


感情のない作文程、面白くないものはない。
あらすじだけ書いて終わるようなものは最早感想文でも作文でもない。

酷く無機質で単調な文章は、誰かの感想文を読んでいるかのようなどこか他人事だった。



原稿用紙三枚分ね、と言われて仕方なく同じような言葉を並べて、最後は面白かったです。で終わらせるような、読書感想文と一緒。





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そんなつまらない人生で、もしかしたら一番楽しかったと思う事があった。


私は不完全だけれど、全てが完璧だという人がいた。
それこそ満点常習犯の、馬鹿みたいに生真面目な人。


美しい見た目、同じくらい澄みきった中身。
一目見ただけで私とは違う人種だと思った。



けれど、彼も不完全だったのだ。
私と同じ、不完全。

すました顔でしか笑わないのかと思っていた。
けれど、それも思い違いで。
年相応の少年らしく、彼も笑うのだ。




迎えに行くからって、困ったように笑うのだ。

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