蜘蛛の日誌(オリジナル) ページ16
蜘蛛の男 side
ヤマトとの最初の記憶は鈍色の空だった
国に拾われた俺は初の任務で東の島国出身のヤマトとタッグを組んだ
俺たちは祖国を追われ、総統に拾われた者同士だった
ヤマト「よろしくお願いしますね。コードネーム、蜘蛛さん」
「あぁ、よろしく。コードネーム、ヤマト」
礼儀正しく、素直なヤマトと仲が良くなるのは早かった
ヤマト「なあ、俺の家族に会ってくれないか?」
「もちろんだとも。親友の頼みだ」
そう言って笑い、肩を叩き合う。実力者だったヤマトと俺のタッグは武勲をあげて行った
お互い昇進し、違う部隊を引き連れる様になってもその友情は変わらなかった
ヤマトの奥さんは同じ島国の出身でコユキといい、話によれば、勘当されたヤマトを追ってこの国にやってきたそうだ
コユキ「ヤマトをよろしくお願い致します」
「任せてください。友としても、軍人としても」
冬に総統が急病により死去
総統が息子に変わると、良好だった隣国との関係も悪くなり、法律が変わった
俺たちは、他国からの移住者だった為監視役として国境出身の医師の夫婦が移民族の隊に派遣される事になった
凛とした目を持つ夫妻だった
最初は慣れなかった隊員達も2人の性格に心を開いていく
地元で神の宿る手と言われた夫婦の医療技術は物凄いものだった
「私達には子供がいる。可愛い女の子だ」
「あの子はきっと私達を超える医師になる」
あの二人の口癖でいつも愛おしいものを語る様に話していた
「皆で写真を撮ろう。俺たちの隊がいかに凄かったのか後世に残すために」
俺は写真を撮った後にまるで死んでしまうかのような言い方に首を傾げながらも列に参加した
2人はあの時から先が見えていたのだと今更ながら気づく
開戦し、後方支援の筈の2人が戦死したと聞いて本部からの情報を隊員に伝えるとヤマトが俺に掴みかかった
ヤマト「なぜだ!!後方支援のあの二人が撃たれて死ぬと言うんだ!!」
「知るか。俺たちの知り及ぶ所ではないと言われたんだ」
ヤマト「この国は腐り始めてる。国が俺たちを消そうとしてるんだ」
「あぁ、ああ!!そうだとも!!あの二人の遺体にすら会うことは叶わなかった!!あの二人の前に4人部下が死んだ!!」
ぐっと手を握りこめば微かな痛みと共に赤が流れる
「マルク、セヴィア、フォン、カルシュ!!俺は全員覚えてる!!俺はまだいい、家族も身寄りもない唯の兵士さ。だが、ヤマトやあの二人は違う」
ヤマトには家族がいる
176人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ