[鬼滅] 逃げるが勝ちと私が言う (ページ4)

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第三話／遭遇戦ページ4

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羽織の下に隠していた短刀を構え、足に力を込めて後ろに飛んだ。

背を向けずに、そのまま洞穴の入口に戻ればその人型のナニカが出てくる。

「…ふぅ…ふっ、ふぅ…」

『…ちょっと、おにーさん怪我だらけじゃん』

日が沈み、代わりにでてきた月の光に照らされて、その姿がよく見えた。

動くのも辛そうで、呼吸も荒々しいのを見て思わず眉間に皺がよる。

頭からはまるで鬼のような角が生え、首元には大きな切り傷があり、少し気味の悪い色をした血が流れていた。

明らかにおかしい

人ではない何かに、身体がすくむ。
でも、それを隠して気丈に振る舞うことを意識する。

「もっとこっちへ…お前みたいな稀血を喰えるのは百余年生きてて初めてだ」

『…マレチ？ははっ、なに、面白い冗談を言うねおにいさん』

乾いた笑いしか零れなかった。
もしかして、こいつが街で聞いた人を食べる鬼、なの？

私がさっきおっちゃんからおにぎりを盗った街に住む、銀さんが話してくれた。

ｰｰ「人喰い鬼が出るから一人で歩くでないぞ」

銀さんはおじいさんだから、きっとそんなことを言うんだと思っていた。

まさか、本当に…

一歩、一歩と覚束無い足取りで近づいてくる鬼に、短刀で切りかかろうとした時、

「どけ女！！」

という声と同時に私は誰かに突き飛ばされた。

「俺がお前を倒すんだ！！…そしたら俺は…っ」

真っ黒の羽織を着た青年は、鬼に斬りかかっていった。

「俺は柱になるんだ…っ！！」

そう叫びながら、変わった技を次々と鬼へと繰り出していく。

『…すごい』

最初はそう思ったが、青年の動きには無駄がありすぎて弱った鬼にでさえ押され気味であった。

「小賢しい…ただの若造などに興味はない」

鬼が軽く手をあげれば、足元に生えていた草が急に成長し、鬼を守るように伸びた。

しかもそれだけでなく、青年を弾き飛ばしたのだ。

「血鬼術・死刺鋭葉(ししえいば)」

次々と周りの木々から葉がいくつも舞落ち、それが全て鋭利な刃物のようになって青年の体に刺さった。

急所は外したようだが、青年は苦しそうにその場に蹲ってしまう。

『結局私がやるわけね』

恐れている暇はない。

私はしっかりと短剣をかまえ、鬼の首めがけて地を蹴った。