『インモラル 3』

109 ページ11

「ほんとにごめんなさい…」

私を庇って段ボールにぶつかった玉森くんに平謝りした。

「あんた達、最近ふざけすぎ。小学生じゃないんだから変な喧嘩するのやめなさい」

本がぎゅうぎゅうに入ったいる段ボールは何十キロもあり、これの山が崩れて相当な音がしたから駆けつけてきてくれた今井さんに怒られた。

「すみませんでした…」

情けないし、恥ずかしい…。



今日は仕事帰りに駅ビルに少し寄ってこうと思い電車で来ていたから、駅までトボトボと歩く。

玉森くん大丈夫かな…。
背中打ったみたいだったけど。

片付けたり怒られたりしてたら遅くなったし、それに買い物する気なんてなくなってしまったから、改札口を抜けて駅のホームへ。

ぼんやりしていると、LINE通知音が鳴った。

《すごい猫背になってるよ》

あまり可愛くない残念な猫が丸まってるスタンプと共に藤ヶ谷さんからLINEが来た。

「えっ！」

キョロキョロすると、反対側のホームに藤ヶ谷さんの姿を発見した。

私を見て笑ってる。

《そんな酷かったですか？》

《なんか人生終わったみたいな感じだった》

可愛くないとこ見られちゃったな…。

《藤ヶ谷さん、サインして？》

LINEを送った後、恥を忍んでサインしたけどノーリアクションの藤ヶ谷さん。

《やって下さい》

《やだよ、恥ずかしいし》

ちぇ〜。

《営業の帰りですか？》

《そうだよ》

あ、じゃあ少しだけ一緒にいたい！

電話のほうが早いかも。

電話をかけようとすると、藤ヶ谷さんのほうの電車が来てしまって藤ヶ谷さんが見えなくなった。

電話は繋がらなくて、慌てて反対側のホームへ行ける階段をかけ上がった。

連絡通路を走り階段を降りると、電車はもう行ってしまった後だった。

…今日絶対占い最下位だ。

無駄に全力疾走したことを後悔して、ベンチに腰かけた。

…別にもうすぐ紅葉行けるし、いいもん。

太股の上でぎゅっと握った携帯を見つめてると、着信音。

藤ヶ谷さんだ！

すぐに出ると『前見て、Aちゃん』って。

え？

顔を上げて前を見たら、藤ヶ谷さんはなぜか反対側のさっき私がいたホームにいて苦笑いしてる。

…同じことしちゃったんだ、私達。

『そっち行くから待ってて』

嬉しくて、落ち込んでいた気持ちが一気に吹っ飛んだ。

110→←108

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す