ぼくたちの失敗

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「どうした太輔、乗らないのか」

みんな解散して、先生が呼んだ先にタクシーに乗り込んだ院長先生は、真っ赤な顔をしてそう聞く。

「少しAと二人で飲み直したいんだ」

太輔先生はそう言うとタクシーの運転手さんに「よろしくお願いします」と告げた。

そんな約束はしていない。

隣に立つ先生を見上げるけど、こちらを全く見ない先生。

「そうか。少しでも一緒にいたいんだなぁ」

院長先生は嬉しそうに笑った。

「来週から家に来てくれると聞いてるよ。楽しみにしている」

院長先生は私に優しく微笑むと、運転手さんに「出してくれ」と告げた。

走り去るタクシー。

「…行こうか」

揚々のない声で先生はそう言うと、私の腕を引っ張り歩き出した。







そこはとても素敵なホテルだった。

私なんかとても縁のないような。

夜景もとても綺麗だったんだと思う。

思う、というのは、私には窓の外を見る余裕なんかなかったから。





先生はホテルの部屋に入るとすぐに私をベッドに押し倒した。

怒っているような、失望しているような、そんな顔で。

でも先生は私を責める言葉は言わなかった。

重すぎる愛を私にぶつけてくるだけだった。

執拗に敏感な所を責めながら、私に先生への愛を、約束を吐かせる。





もっと言って。

そんな言葉じゃ足らない。

どこにも行かないって、

ずっと俺のそばにいるって感じさせて。






先生から求められて、必死に応えるけれど全く響かない。

達してもなお責める先生に、気持ちいいのは通り越して苦しかった。

「もっとだよ、A。もっと頂戴」

溢れ続ける蜜を絡めとり、見せつける先生。

止めどなく零れる涙。

身体中の水分がなくなってしまいそう。

クラクラする。

絶え間なく続く刺激と、息も出来ないような重すぎる愛に。




先生との初めては、幸福感など微塵もなく、気を失うまで続く拷問のようだった。

それでも私はひたすらに愛の言葉を口にした。

声が枯れるほど。

だって先生の顔も酷く傷ついていたから。





傷つけられた方ばかりじゃなくて

きっと

傷つけた方も、悲しい。




先生。

大丈夫。

私は先生の傍にいます。

だからそんなに苦しまないで────

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