ぼくたちの失敗

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次の日。

受付を開局していると、院長先生と太輔先生が裏口から受付に来た。

「おはようございます」

院長先生と太輔先生に挨拶をした。

「うん、おはよう。今日は往診の日だから午前の診察が終わったら太輔と向かってくれ」

「はい、わかりました」

院長先生に返事をして、チラッと太輔先生を見たけど先生は何も言わずに奥の部屋へ行ってしまった。

先生、怒ってるのかな。

午前中はインカムでのやり取り以外、太輔先生と話すことはなかった。

定期的に行っている往診は、近くにある老人ホームで。

歯科の診察台がある部屋があって患者さんはそこにやってくる。

診察をしていないお昼休みの時間に太輔先生と私でその老人ホームへ向かった。

先生はここの方達にとても気に入られていて。

ただ診察するだけではなく、世間話にも嫌な顔をせず優しく対応する先生。

「やだ〜っ、私ったらまたつまらない話を…ごめんなさいね」

「いえ、僕のほうこそ色々なお話を聞かせて頂いて勉強になります」

先生が答えると嬉しそうに目尻に皺を寄せ微笑む患者さんに先生も優しく微笑んだ。

じわっと心が温かくなる。

やっぱり好きだと思った。

老人ホームを出て診察道具を車に積む先生。

「皆さん、先生とお話できて嬉しそうでしたね」

思いきって話しかけてみた。

すると、動作が止まる先生。

「…そうかな」

「はい。先生と話すと癒されるとか言ってましたし…」

「この歳で情けないんだけど、ずっとこの仕事しかしてきてないからあんま人生経験ないんだよね。だからあのくらいの年齢の方と話すのはいつも緊張するよ」

「そうなんですか…？」

「うん。ボキャブラリーもないし」

ボキャブラリーって…(笑)

「…ふふっ」

先生がなんだか可愛くて、私は笑ってしまった。

私が笑うと、先生は目を見開いたあと切ない顔になったから驚く。

「どうかしましたか…？」

「昨日はほんとにごめん」

「…」

大丈夫です。

そう言いたいけど。

私、やっぱりほんとに怖かった。

「Aの笑顔が好きなのに、笑わせたいと思うのに、怖がらせてばかりだよな」

やるせないような笑顔の先生。

「だけどどうしても抑えきれないんだ…」

北山さんの言葉が頭によみがえる。

けどそれを否定するように首を振った。

「私も先生に安心してもらえるような自分になりたいです…。だから私ももっと変わりたい…」

「A…」

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