ぼくたちの失敗

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「俺も、変わりたい。Aを怖がらせないように」

「先生…」

「あの時電話が鳴ったの、あれ、北山さんからだった」

「えっ？」

北山さんがかけたの？

もしかして止めるために？

でも万が一先生が電話に出たらどうするつもりだったんだろう。

まさか話すわけにはいかないから切ってしまったかもしれないけど、北山さんの印象は悪くなってしまうはず。

申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「彼の名前を見て、なんておかしいかもしれないけど、思い出したんだ。俺も彼みたいにAを心から笑顔にしてあげられるようになりたいって」

「先生…」

「大事なんだ、とても。こんな俺のことなんか信じてもらえないかもしれないけど」

「信じます…」

信じたい。

先生も変わろうとしてくれているんだから。

「…ありがとう」

ほら、大丈夫。

先生だって、ちゃんと変わりたいって思ってくれてる。

「早く一緒に暮らそう」

「…はい」

返事をしたら、安心したように笑ってくれて、私も嬉しくなった。

一緒に暮らしたら、先生も安心してくれるだろうし。

早めに考えなきゃ。

そう思っていたけど、考える時間は、私が思っていたよりも全くなかった。







「Aさん、ちょっといいかしら」

先生に返事をした翌日、奥様に呼ばれてお昼の休憩時間に先生宅にお邪魔した。

「来週からもう、我が家に来てくださるのね」

可愛らしい笑顔でそう言う奥様に唖然とした。

「…え？」

「太輔がそう言ってたから。ふふ、私はもっと先かと思ってたのよ。急かしたら申し訳ないかなって」

太輔先生に返事はしたけど、まさか来週だなんて思わなかった。

「でもAさんが来週って言ってくれて、私とても嬉しかったわ」

そんな風に喜ばれたらもう否定はできない。

「…よろしくお願いします」

「こちらこそ。でね、今度お花の教室のお友達が我が家に集まるの。ぜひAさんを見てみたいって」

「えっ？」

「皆さん、太輔のことを昔から可愛がって下さってる方達でね、自分の子どものように思って頂いてるからお嫁さんになるあなたに会いたくて仕方ないみたいで…。今度のお休みの日、ご都合はいかが？」

「…でも」

「そんなに気負わなくて大丈夫よ。皆さんとても優しい方達だし」

大丈夫かな…。私、お花に全く詳しくない。

すると突然リビングの扉が開いた。

「その人がAさん？」

「浩輔、あなた…」

浩輔って、確か先生の弟さんの名前だ。

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