溺愛ロジック F side

偽りの善人 ページ19

Aがストレスからくる記憶喪失になったと伝えると、教頭は顎が外れるんじゃないかっていうくらい口をあんぐり開けた。

「ど、どうするんですか…。親御さんは何て？」

オロオロし出す教頭は声が上擦っている。

「…とりあえずまだ我が校に通っていただけるそうです」

淡々と事実のみを伝える俺を信じられないというような顔で見てきた。

「まだ通う？！転校をすすめなかったんですか？！」

「はい」

わざとらしく大きな溜め息をつく教頭。

「ああ、困りましたね…」と今度は頭を抱えだす。
こいつ、きっとまたストレスで髪が薄くなるな。これ以上薄くなるようならカツラなり植毛なり必要だろ。…大きなお世話だろうけど。

「こんな時だからこそ、広瀬を支えてやって立ち直らせれたら、学校の評判も上がるんじゃないんですか？」

「…それを藤ヶ谷先生はできる、ということですか」

そうじゃないなら許さないといったような目で見てくる。

俺は頷き、更に話を続けた。

「ここで見放してしまう方が学校としては良くないような気がしますが。」

「我々が支えてやり、学校生活にまた馴染めるようにすれば…」

損得勘定をし出す教頭。

心の中で舌打ちをした。

「僕に任せて下さい。何かありましたら責任はすべて負うつもりです」

「いやいや、そんな、藤ヶ谷先生にそこまでさせられませんよ。…でもよろしく頼みますね」

建前ではそう言うけど、実際失敗したらすべて俺に責任を擦り付ける気だろう。

別に構わないけど。

いっそのこと失敗して泡をふく教頭を見てみたい気もするから。

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