溺愛ロジック F side

再始動 ページ20

Aの母親から退院の知らせを受けて、Aの自宅へ向かった。

「A、担任の藤ヶ谷先生よ。話したでしょ？あなたがすごく…すごく頼りにしてた先生なのよ」

Aは俺の顔をじっと見つめてきた。

あの怯えるような表情は全くなくなっている。

出会った頃の何も知らないあどけない顔をしていた。

…ほんとに忘れたの？

あんなに愛し合ったことも？

Aから俺を求めてくれるようになったことも？

第一印象を良くするためにも、落胆する気持ちを隠し、できるだけ優しく微笑み、2度目の自己紹介をした。

そんな俺を見て頬を染めるA。

とりあえず第一印象は完璧だ。

あとはこれからどうするか。

またAに俺のことを好きになってもらうのは容易いだろうけど、時間がかかってしまう。

玉森だってどうにかしてまた自分に好意を寄せるように動くはずだ。

そうなると教師の俺よりも、クラスメイトの玉森のほうが、確実に有利だ。

多分Aは教師の俺とそういう関係になるのは躊躇するような気がするから。



再び学校へ来れるまでの間、俺は毎日Aの家へ足を運んだ。

勉強を見るという名目でAの部屋で二人きりになる。

問題集を必死に解くAを見つめた。

愛しい気持ちが溢れてくる。

ずっと見ていても飽きないくらいに。

俺の視線に気づいたAが顔を赤くした。

…このまま抱いてしまいたい。

欲望が沸き上がる。

そんな気持ちに畳み掛けるように潤んだ瞳で俺を見るA。

可愛い。

その瞳に吸い込まれるように顔を近づけようとすると「先生、ありがとうございます…」と呟くA。

「…何が？」

「私のために毎日お見舞いとか、こうして勉強まで…ありがとうございます」

Aは小さく頭を下げた。

それくらい、何でもないのにな。

俺は君のためなら何だってしてあげれるよ。

たとえそれが、誰かを不幸にするようなことであっても。

俺の傍にいてくれるなら、とびきり甘やかしてあげる。

だけど、離れるのなら、その時は…。

だからA、俺を選んで。

そうしたら、二人で幸せになれるのだから。

残酷なほどに甘い→←偽りの善人

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